選択型実務修習について written by 76期司法修習生 佐藤 和樹
1 はじめに
今回は、選択型実務修習について、ご紹介いたします。
選択型実務修習とは、「司法修習生が、分野別実務修習の4分野を一通り修習した後に、自らの進路や興味、関心に応じて、主体的に選択、設計することにより、分野別実務修習の成果の深化と補完を図り、又は分野別実務修習の過程では体験できない領域における実務修習をするための課程」をいいます(最高裁判所HP抜粋)。
A班の方は、和光での集合修習後に、B班の方は分野別実務修習後(集合修習前)に、選択型実務修習があり、その名のとおり、修習生が分野別実務修習を経たうえで、自らが興味・関心のある分野について、約2か月の修習プログラムを作成し、選択した分野で修習を行うことになります。
選択することのできる修習は数多く設けられており、大きく分類すると、①全国プログラムと②各修習地でのプログラム(裁判所、検察、弁護士会)、③自己開拓プログラムに分けられます。
なお、修習期や各修習地によって、プログラムの内容は変動いたしますが、一定のイメージを持って頂くことで、選択型実務修習を少しでも充実したものにすることができると思います。
2 選択型実務修習
1 全国プログラム
まず、全国プログラムについて、ご紹介いたします。
全国プログラムとは、修習地に限定されず、全国の修習生が応募することのできる修習プログラムのことをいいます。
選択することのできるプログラムには、様々なものがありますが、主なプログラムとしては、法務省や最高裁判所、中央労働委員会、全国の法テラス、上場企業のインハウス等です。修習期間は、概ね1週間程度になります。
全国プログラムの修習は、普段の修習では、見ることのできない内容のプログラムとなっており、興味関心のある方はぜひ応募することをお勧めします。
もっとも、全国プログラムの各プログラムには応募枠というものがあり(プログラム内容にもよりますが、1つのプログラムに概ね数名程度の枠になっていることが多いです。)、修習生は事前に希望するプログラムに応募し、選考を経たうえで採用されなければいけません。応募書類は不要とするものもありますが、多くは、志望理由書等の応募書類の提出が求められており、修習生は事前にそれらの書類を作成し、提出をしなければいけません。
そのため、興味・関心のある全国プログラムに応募したとしても、採用されるとは限りませんので、注意が必要です。
2 各修習地でのプログラム
次に、各修習地でのプログラムをご紹介します。
各修習地でのプログラムは、全国プログラムとは異なり、基本的には第1希望が採用される傾向にあります。各修習地のプログラムは、裁判所、検察、弁護士会のそれぞれが企画するプログラムが設けられています。
ですので、修習生は、分野別実務修習で興味・関心を持ったプログラムについて、自ら自由に選択をすることができます。
個人的に特にお勧めすることができるプログラムは、民事模擬裁判と刑事模擬裁判です。いずれも修習生がすべて担当し(民事の場合は当事者本人役、代理人弁護士役、裁判官役、刑事の場合は検察官役、弁護人役、被告人役、証人役、裁判官役等です)、実際の事案を模擬裁判用にアレンジした事案をもとに、模擬裁判を体験することができます。
期日では、実際の裁判所の法廷を利用し、書証の提出等はチームズを利用する等、実務で行われていることをそのまま体験することもできます。尋問の準備なども証人と打合せをしつつ、尋問事項を作成する等、大変やりがいのあるプログラムとなっています。
さらに、模擬裁判の際には、実務家の先生方も同席し(同席をするだけで、基本的に模擬裁判の進行はすべて修習生が行います)、講評をして頂けます。修習生だからこそ、率直なご指摘を頂ける貴重な機会になります。
何より、知識として知っていても、実際にやるとやらないとでは全く異なります。準備等で大変ではありますが、模擬裁判を経ることで学び得ることは大変多いため、ぜひ、チャレンジして頂きたいプログラムです。
3 自己開拓プログラム
最後に、自己開拓プログラムについてご紹介します。
自己開拓プログラムとは、全国プログラムや各修習地でのプログラムとは異なり、自ら修習内容を開拓するプログラム内容となっています。
ですので、自己開拓プログラムを希望する修習生は、どこで、どのような修習を行うのかについて自己開拓プログラムの計画書を提出し、許可を得る必要があります。
特にやってみたい修習内容がある方にとっては、自己開拓プログラムを活用することで、全国プログラムや各修習地でのプログラムにはない、独自の修習を行うことも可能です。
3 まとめ
以上をまとめますと、選択型実務修習は、修習生が主体的に修習計画を組立て、興味関心のある分野をさらに深化させることのできる修習となっています。
分野別実務修習では見ることのできなかった修習を選択するもよし、興味関心のある分野をさらに深めるのものよし、新たな分野を開拓するのもよいでしょう。
本記事にて、選択型実務修習のイメージを持って頂けたら幸いです。