分野別実務修習 -集合修習- written by 76期司法修習生 佐藤 和樹
1 はじめに
今回のコラムでは、集合修習についてご紹介します。
集合修習とは、「実務修習の体験を補完して、体系的、汎用的な実務教育を行い、法律実務のスタンダードを指導する課程で、司法研修所において2か月間実施され」るものです(最高裁HP抜粋)。
分野別実務修習にて、実務を実体験してきた修習生が導入修習時以来、再度、和光に参集し、実務で活用される知識の整理を行うことを主眼としています。
以前の記事(分野別実務修習)でもご紹介しましたが、A班は集合修習を行った後で、選択型実務修習、B班は選択型実務修習を行ったうえで集合修習を行います。
集合修習は、その名の通り、修習生が和光に参集し、実務家教員によるクラス担任制のもと、実務に沿った演習や即日起案を行うことになります。
導入修習時とは異なり、分野別実務修習を経ていることを前提に講義や演習が進んでいきます。そのため、分野別実務修習で学んだ知識を整理したうえで、集合修習に望みましょう。
具体的に集合修習ではどのようなことがなされているのか、以下詳細にご紹介します。
2 集合修習
1.即日起案
まず、集合修習では、「実際の事件記録をアレンジした修習用の事件記録(修習記録)を使って、起案することを中心に指導が行われます。起案は、教官が添削、講評したり、司法修習生相互で討論をしたりする素材となります」(最高裁HP抜粋)。
各科目2回、即日起案が設けられており、9時50分から16時35分までの時間を利用し、各教室に参集し、手書きで起案をすることになります。2回試験を想定した起案になりますし、具体的に成績もつきます(なお、成績は3段階評価(AからC)又は5段階評価(AからE)になります)。
また、即日起案の内容につき、クラス担任の教官から講評もあります。全体に対する講評を踏まえたうえで、なお疑問点等がある場合には個別に教官に連絡を取ることで、自分の起案のどこに改善点があるのかを知ることもできます。
そのため、即日起案は2回試験に向けて、非常に重要な機会ですので、気を抜かず、しっかりと取り組むことをお勧めします。
即日起案では、科目によりますが、参考答案として成績の良かった修習生の起案がteamsにアップロードされることもあります。その他にも、教官室が作成したパワーポイントも同様にアップロードされますので、講義前後の復習に大変役に立ちます。
さらに、修習生通しで、起案について議論し、内容を深め、理解するのも集合修習ならではの醍醐味です。2回試験対策というわけではありませんが、集合修習中に不得意科目を早期に発見し、対策を練ることが大切です。そのためには、自学自習も重要ではありますが、同じ修習生に相談し、起案を互いに添削し、どこがよくて、どこが悪いのかについて、気兼ねなく話をすることが大切であると感じています。
2.演習
集合修習では、即日起案の他に、各科目演習があります。
その中でも、特徴的なのは、民事・刑事の模擬裁判です。修習生用にアレンジされた事件記録をもとに、民事及び刑事のいずれにおいても、修習生のみで判決まで行います。
その際、修習生ごとに配役を決定し、配役ごとに何を担当するのか(民事では準備書面担当チームや、尋問担当チーム、刑事では公判前整理担当チームや尋問担当チーム等です)を決めます。配役の中には、当事者本人役(刑事では、被告人本人役)もあります。
集合修習の期間を通じて、実施されますので、模擬裁判を通して、手続きの一連の流れを整理することができます。
ですので、自分の担当チーム以外についても、何をしているのか情報交換をすることで、より理解が深まることができます。
3.課外講義
導入修習中にもありましたが、集合修習中にも課外講義が和光で実施されます。
大変著名な刑事弁護人の先生や国際関連で活躍する先生方等、普段、直接お話をお聞きすることができない先生方の講和を和光で直接聞くことができる貴重な機会です。
連日の起案や演習等で集合修習は非常に多忙ではありますが、今だからお聞きすることができる話などもありますので、積極的に参加することをお勧めします。
なお、課外講義には、講和だけでなく、修習生が実際に参加する講義も設けられていることもあります。私は、刑事の尋問技術を学ぶ趣旨で、演習の際に用いられた事件をもとに、刑事弁護教官室が主宰の法廷尋問技術の課外講義に参加し、その際は、実際に主尋問(又は反対尋問)を行い、その場で刑事弁護教官からご指導を頂くことができました。
このように、視野を広めるという意味も込めて、積極的に課外講義に参加しましょう。
3 まとめ
以上が集合修習の内容となります。
集合修習では、2回試験に向けた対策がポイントになりますが、2回試験以降の実務に向けた内容も含まれています。
ですので、集合修習では、わからないことをわかった気にせず、積極的にわからないことは教官や同期の修習生聞くことをお勧めします。
この記事をお読みいただき、少しでも集合修習のイメージを持って頂ければ幸いです。