民事訴訟法の基本書 written by 76期司法修習生 佐藤 和樹
目次
1 はじめに
今回は、民事訴訟法の基本書についてご紹介したいと思います。
民事訴訟法は、概念的な説明が多く、実際の問題に適用したら結局どうなるのか、イメージが掴みづらく、苦手意識を持たれている方も多いと思います。
そこで、今回は、数ある民事訴訟法の基本書(演習本含む)の中から、おすすめできる本についてご紹介したいと思います。
2 基本書
1 リーガルクエスト民事訴訟法(三木浩一外3名著、有斐閣)
民事訴訟法の基本書といえば、本書と後述する和田先生の本の2択といえるでしょう。本書は、わかりづらい民事訴訟法の概念について、具体例を示しながら丁寧に解説をしている点に特徴があります。
また、民事訴訟法だけではありませんが、筆者の立つ学説依りに解説がなされることがあり、実は少数説であったということもありますが、本書は学説の対立がある際にはその旨をきちんと明記したうえで、通説(又は多数説)を摘示し、さらには、通説(又は多数説)に対する疑問も提起しています(この視点は非常に重要で、司法試験においても、単に通説(又は多数説)だけを理解していれば足りるというわけではなくなっています。)。
一見すると、分量が多い印象を受けると思いますが、民事訴訟法を理解するうえでは、逆に中途半場な説明ではなく、深く丁寧な説明の方が理解に役立ちます(いわば急がば回れです)。民事訴訟法の基本書選びで困っている方は、ぜひ本書を手に取って頂ければと思います。
通読向き ★★★★☆
わかりやすさ ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★
https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641179561
2 基礎からわかる民事訴訟法(和田吉弘著、商事法務)
リーガルクエスト民事訴訟法と双極を成す基本書として、本書があります。
本書の特徴は、わかりやすさはもちろん、判例の引用及び判例の具体的な説明が充実していることです。また、難解な判例については図を活用する等して、丁寧に解説をしています。
また、和田先生の単著ですので、執筆内容にブレがありません(もちろん、リーガルクエストは複数著ですが、気になる程に執筆内容にブレがあるわけではないのでご安心ください)。
通読向き ★★★★☆
わかりやすさ ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★
https://www.shojihomu.co.jp/publishing/details?publish_id=3287&cd=2961&state=new_and_already
3 民事訴訟法(渡部美由紀外2名著、日評ベーシック)
本書は、比較的薄めの基本書としておすすめです。個人的に、渡部先生の記載(渡部先生の法学教室連載は必読です)部分が大変わかりやすく、目からうろこのところがありました。
もっとも、上記2冊と比較すると、内容が薄いところもあり、行間を読まなければいけないところもあり、本書1冊のみでは不十分な印象を受けます。
ひとまずは、民事訴訟法の概要を掴みたいという方にはおすすめです。
通読向き ★★★★☆
わかりやすさ ★★★☆☆
おすすめ度 ★★★☆☆
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7304.html
4 ロジカル民事訴訟法(越山和広著、弘文堂)
法学教室の連載でもおなじみの越山先生が記載された演習本です。出題されている問題も幅広く、民事訴訟法のいわゆる論点となるところについて、網羅的に記載されています。
さらに特徴的なのは、問題・解説だけでなく、具体的な答案例が掲載されているところです(教授が記載した答案例が掲載されている演習本は比較的少ないと思います)。
もっとも、後述するロープラクティスの完成度と比較すると、どうしても優先度が低くなってしまいます(とはいえ、本書もかなりの良書です)。民事訴訟法の演習で比較的余力がある方にはぜひおすすめできる演習本となっています。
通読向き ★★★☆☆
わかりやすさ ★★★☆☆
おすすめ度 ★★★☆☆
https://www.koubundou.co.jp/book/b437882.html
5 読解民事訴訟法(勅使河原和彦著、有斐閣)
本書は、民事訴訟法の全体を解説するというスタイルではなく、論点となる部分(既判力や補助参加など)に限定して、深掘りした解説がなされています。
あまりメジャーな基本書ではありませんが、既判力についての記事は特におすすめです(既判力の作用と効力を論理明確に記載している基本書は本書の他にはあまりないと思います)。分量も比較的薄く、特定の論点について、深掘りをしたいと考えている方にはおすすめの基本書となっております。
通読向き ★★★★☆
わかりやすさ ★★★☆☆
おすすめ度 ★★★☆☆
https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641136892
6 ロープラクティス民事訴訟法(山本和彦他4名著)
民事訴訟法の演習本としては、本書が最適であるといえます。複数の筆者によって執筆がなされていますが、内容は非常に論理明快で、リーガルクエストとの相性も抜群です。また、扱われている問題についても、網羅的で司法試験の出題論点とも親和性があると感じます。
民事訴訟法の演習本に迷われている方は、まず本書を手に取ることをおすすめします。
通読向き ★★★★★
わかりやすさ ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★
https://www.shojihomu.co.jp/publishing/details?publish_id=3225&cd=2897&state=new_and_already
7 民事訴訟法概論(高橋宏志著、有斐閣)
高橋先生の重点講義民事訴訟法の内容を非常にコンパクトにした本となっており、高橋先生がご記載してらっしゃることから、内容の信頼性は抜群です。重点講義に手を出したものの、あまりの分量の多さに挫折してしまった方は、本書を手に取るとよいでしょう。
もっとも、内容はやや難解になっており、薄めの基本書となっているとしても、しっかり腰を据えて読み込む必要があると感じます。
通読向き ★★★★☆
わかりやすさ ★★☆☆☆
おすすめ度 ★★★☆☆
https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641137349
8 基礎演習民事訴訟法(長谷部由起子外2名編、弘文堂)
複数の先生方によって共同執筆された演習本となります。扱っている問題も網羅的で、解説も非常に丁寧に記載されています。
他方で、解説の濃さは、先生方によって濃淡があり、わかりやすさと一貫性という観点からするとやや扱いづらい印象を受けます。
民事訴訟法の勉強に余力があり、2冊目以降の演習本を探されている方にとっては最適かと思います。
通読向き ★★★★☆
わかりやすさ ★★★☆☆
おすすめ度 ★★★☆☆
https://www.koubundou.co.jp/book/b352247.html
3 最後に
様々な基本書(演習本)をご紹介しましたが、民事訴訟法が言葉の概念を理解することが難しい科目です。他の科目と比較して、具体的なイメージを持つことが非常に大切になるので、ある程度詳細に記載されている基本書を選ぶことをおすすめします。