分野別実務修習‐総論‐ written by 76期司法修習生 佐藤 和樹
1 はじめに
今回は、分野別実務修習について、総論をご紹介いたします。
まず、そもそも司法修習の大まかな流れですが、76期司法修習生は、
①導入修習(1ヵ月程)→②分野別実務修習(8か月程)→③集合修習(2か月程)
→④選択型実務修習(2ヵ月程)→⑤司法修習生考試(いわゆる二回試験)
となっています。
なお、大規模庁(東京や大阪、京都等)が修習地である場合はA班、それ以外がB班に分類され、A班は上記流れで、B班は③と④の順番が逆になります。
今回は、②分野別実務修習についての総論をご紹介し、分野別実務修習の詳細な内容についてはまた別のコラムにてご紹介いたします。
2 分野別実務修習
1 分野別実務修習とは
(1)分野別修習全体像
分野別実務修習は、「全国各地の地方裁判所、地方検察庁、弁護士会という実務の第一線において、経験豊富な実務家の個別指導の下で、実際の事件の取扱いを体験的に学ぶ修習(個別修習)」を言います(最高裁判所HP参照)。
導入修習や集合修習とは異なり、修習生が全国各地の修習地に散らばり、各地の裁判所、検察庁、弁護士会(配属される弁護士事務所)にて、修習を行うことになります。
「分野別」と記載されているように、裁判所、検察庁、弁護士会に分かれますが、さらに詳細に区分すると、民事裁判、刑事裁判、検察庁、弁護士会に分けられます。
つまり、裁判修習には民事裁判修習と刑事裁判修習があり、同じ裁判所であっても別物の修習として扱われています。
(2)分野別修習の各クールイメージ
そのうえで、分野別実務修習は、4分割(第1クールから第4クールに分けられています)されており、各クールの期間は、約2か月となっています。
例えば、第1クールが刑事裁判修習、第2クールが弁護修習、第3クールが民事裁判修習、第4クールが検察修習といったイメージです。
配属地の規模や修習生の人数等にもよりますが、各地に配属された修習生は、さらに5~10名程度の「班」に分けられ、それぞれの「班」ごとに各クールを過ごすことになります。
例えば、A県の修習生が40人いた場合、その40人が各10人の班に分けられ(1班から4班)、その班ごと各クールをまわることになります。
第1クールでは、刑事裁判修習が1班、民事裁判修習は2班、弁護修習が3班、検察修習が4班、第2クールでは、刑事裁判修習が2班、民事裁判修習が3班、弁護修習が4班、検察修習が1班・・・といったイメージです。
1つのクールは、約2か月程度になり、その2か月の間で修習先の実務を学ぶことになります。
2 各分野別実務修習の概略
次に、各分野別実務修習についての概略をご説明します。それぞれの詳細については、また別のコラムにてご紹介しますので、お楽しみにしてください。
(1)裁判修習
裁判修習では、「法廷を傍聴して裁判官の訴訟指揮を間近で体験したり、係属中の事件の記録や法廷でのやり取りを検討して、裁判官と判決の内容について意見交換をしたり、その事件における事実上又は法律上の問題点についての検討結果を裁判官に文書で報告して、その講評を受け」ることができます(最高裁判所HP参照)。
刑事事件では、裁判傍聴(特に裁判員裁判事件の傍聴や評議への参加は、貴重な経験になるでしょう)、事件記録の検討、民事事件では裁判傍聴(尋問期日や和解期日、弁論準備手続き期日などへの参加)、事件記録の検討などです。
(2)検察修習
検察修習では、「実際の犯罪事件について、指導係検事等による指導の下、証拠収集、被疑者や参考人に対する証拠調べなどの捜査について学び、体験し、起訴・不起訴の処分について意見を述べたり、検察官の公判立会を傍聴したりします」(最高裁判所HP参照)。
検察修習では、実際の事件が修習生に配点され、捜査段階から公判請求をするか否かまで、各修習生が担当し、判断することになります。被疑者取調べも指導担当検事等の立ち合いのもと、修習生が行います。
(3)弁護修習
弁護修習では、「個別指導弁護士の下で、法律相談や法廷などに立ち会ったり、様々な法律文書を起案して講評を受けたり、弁護士会の活動を体験したりします」(最高裁判所HP参照)。
弁護修習は、各地の弁護士事務所に修習生が1人ずつ配属され、指導担当弁護士のもので、様々な事件を検討することができます。特に、受任する前の事件について、法律相談の段階から修習生も同席をすることができ、弁護士がどのようにして、法律相談を行い、事件を受任しているのかを知ることができる貴重な機会です。
また、弁護士接見も修習生は同席することができ、弁護人としての活動も垣間見ることができるでしょう。
3 終わりに
今回は、分野別実務修習について、総論部分をご紹介しました。このコラムにて、まずは分野別実務修習とは、どのようなものであるのかについてイメージを持って頂けたら幸いです。
そのうえで、分野別実務修習のそれぞれの詳細については、また別のコラムにてご紹介いたしますので、気になる方はそちらを参照して頂けますと、より具体的なイメージを持つことができると思います。
本記事を読まれた皆様にとって、1つでも有意義な情報を提供できていれば幸いです。また別記事にてお会いいたしましょう。