【ミライの弁護士】第4回 巨大な町弁の中で、主体的に生きる Interviewer & Written ぽんぽん
目次
0.はじめに
こんにちは!ぽんぽんです。
司法試験終了後も、私たち司法試験・予備試験受験生は『そこに所属するのか』問題の渦中に放り込まれます。
弁護士という職業柄、優劣競争からはもはや逃れられないにしても、せめて、掌中にできる限り多くの選択肢を持ちたい。そのためには、就活生・採用側の双方において『真実の情報』に触れることができる場が必要だ、という観点から「ミライの弁護士」シリーズはスタートしました。
ここでは、様々な法律事務所・企業で働く弁護士の方、法務部の方にインタビューさせて頂き、その魅力・業務内容・なぜそこで働くことを選んだのか等、これらから法曹となる皆さんが職場を選ぶ際に「知りたい!」と思うであろうことをお聞きしていきます。
「司法試験に合格した後、どんな事務所で、どう働きたいか?」
現場の生の声をお届けすると共に、これからの時代の弁護士の魅力をお伝えすることで、皆さんが今後の進路を選択される際の一助となれば幸いです。
1.弁護士としての成長は『日常をひとつひとつ積み重ねること』
ぽんぽん(以下、『ぽん』):今日は、ベリーベスト法律事務所の松井剛先生にお話しを伺います。早速ですが、御所では「ベリーベスト(最善)を尽くし、ベリーベストな(一流の)弁護士を目指す」という標語で採用活動を行っていらっしゃいます。これは事務所名から取られたものだと思うのですが、御所で考えていらっしゃる「一流の弁護士像」について詳しくお聞かせください。また、この「一流」の定義は業務分野又は事務所の立地により異なるものなのでしょうか。
松井剛先生(以下、敬称略):月並みな表現かもしれませんが、一流の弁護士とは、案件の内容にかかわらず依頼者のために何ができるかを真剣に考えて精いっぱい努力する、日々研鑽を積むことができる弁護士だと考えています。
業務分野や事務所の位置でそれが変わることはありませんし、そのような意味での一流の弁護士になるのに経験年数や事務所の立地は関係なく、弊所では姿勢次第で1年目からなることができると思います。
ぽん:松井先生は司法修習68期ということで弁護士6年目ということですが、先生ご自身の経験から『こういう姿勢が成長には必要不可欠だった』というものはあるでしょうか。
松井:1件1件の事件に深く取り組むことですね。
これは当たり前のように聞こえますが、弊所では様々な分野の案件を幅広く取り扱いますので比較的早いうちから結構忙しくなるんです。そうすると、1件にかけられる時間が少なくなってしまい、仕事のクオリティが下がる危険もやはりあります。これは顧客にとってはもちろんのこと、弁護士にとっても成長の機会を逃すことになってしまいます。
1件1件の事件に深く取り組むことで、「ちゃんとやればもっと成長できたのに…」という後悔は避けてもらいたいと思っています。
ぽん:忙しさに引きずられず、自分が成長できるチャンスである事件ひとつひとつに熱心に取り組むことが大切ということですね。
御所内で研鑽を詰む機会としては、どのようなものがあるのでしょうか。
松井:所内での勉強会は分野ごとに色々と開催されています。実は先日、弊所の弁護士が刑事事件で無罪判決を勝ち取ったんです!その弁護士からの事例紹介ももちろん予定しています。
また、研鑽という意義からは少しズレるかもしれませんが、1年目の先生からパートナーの先生に至るまで、所内の全弁護士・士業が参加しているメーリングリストで相談事項をシェアし、経験や知識を募ることが活発に行われています。日々自分が担当している分野以外の情報にも常に触れることができ、私も自分が担当する業務分野かどうかにかかわらず目を通して常に最新の情報や知識を得るよう心掛けています。なかなか面白いんですよね。
ぽん:こういった細かい点でも、松井先生自ら積極的に学ばれようとしている姿勢が伺えます…!積極的に学ぶ姿勢があれば学べる機会は多数あるというのは、大規模事務所ならではの強みですね。
2.入所後のベリーベスト ―ベリーベストでの1年目とは?
ぽん:最近、就活生の中でもいわゆる「新興系法律事務所」の注目度が急上昇中だと感じます。御所が他の事務所と差異化を図っている点や、就活生にとってのポイントを教えてください。
松井:ベリーベストは、組織は大きいものの普通の法律事務所、いわば「巨大な町弁」だと思っています。法律相談を受け、受任した後は自分で一生懸命泥臭くそれを処理する。実は、そこにこだわっています。もしかしたら、分業が徹底されているとか、セントラルキッチン方式という印象があるかもしれませんが、そういったこともあまりありません。
一方で、大規模な事務所であるからこそ勉強会や研修によって知識、経験の共有が図りやすいという利点があります。上記のメーリングリストを活用し、事件処理で迷ったときなどに300人近くいる弁護士に相談することもこの一例ですね。
また、当事務所が扱う様々な事件分野に、入所直後の研修ではすべて触れることができます。あまり興味のなかった未知の分野についても学ぶ機会があるので、面白さや必須知識を知り、その後の弁護士業務の中でこれらの知識を活用することができます。自分の可能性やクライアントの期待に十分応えるという意味で、これは非常に大きなメリットだと思います。
さらに、弊所では入所直後は先輩弁護士とタッグを組んで各事件に取り組みますが、『先輩弁護士』と一口に言っても人それぞれ事件処理の方法もこだわりも異なります。現場で活躍する先輩のノウハウや着眼点を多数学べる点も、新人弁護士にとっては自分の成長に役立つ環境だと思います。
普通の事務所だけれども、大きいからこそできることがあるのが弊所の強みですね。
ぽん:就活生や修習生の段階では、入所予定の事務所ではどのような分野を扱うことができ、また自分は何が得意で、どういった特徴があるのか自分自身も未知数であることがほとんどかと思います。むしろ知らなくて当たり前なので、「自分とはこうだ」と頭から決めつけずに、様々な学びの機会を得られるのは大規模事務所ならではですね。
御所では、1年目の弁護士に対して手厚い研修とフォロー体制を整えていらっしゃるとのことですが、この点について詳しく教えてください。
松井:弊所では座学研修・OJTの両方を並行して行います。
例えば、73期の入所者(※司法修習73期は令和元年司法試験合格者に当たる。)だと、2020年12月に入所⇒最初の2週間程度は実務演習も含めた座学研修⇒(東京オフィス配属の弁護士は)1月の2週目頃から支店にて約1か月半程度OJTを行いながら、並行して週2回程度の座学研修も引き続き実施されます。入所3,4か月後にもなると、研修は週1回程度の座学研修(発展編)を受講して頂くというように、約半年をかけ手厚く研修を行っています。
フォロー体制は、入所後も細やかな面談を行っています。入所後1か月、3か月…というように、各段階で新人弁護士が困っていること、現在の業務状況、入所前と現在のミスマッチ等を面談で細かく把握することで、「入所後は各自で頑張ってね」と放置しない体制を整えています。
ぽん:入所さえすればそれで良し、ではなく事務所の一員として働いていけるよう手厚いバックアップ体制が整っているということですね。
御所では弁護士各人の自主性を尊重し、自由な雰囲気の中で仕事をすることができるとのことですが、実際にはどのような雰囲気でしょうか。
松井:弊所ではコアタイム制を採用しており、その時間内は事務所で執務をして頂くことになりますが、ホームページの文字をそのままイメージするよりは自由な雰囲気で働いて頂けると思います。例えば、先輩弁護士が仕事しているから帰りにくいといったこともないですし、必要以上に所員を縛るルールは特にありません。私自身も早く帰宅できるときは早めに帰宅し、自宅でゆっくり過ごすこともあります。
もっとも、この点は中に入って体感して頂くのが一番だとは思います。是非入所して、意外な自由さを体感して頂ければと思います(笑)。
ぽん:御所では弁護士として活躍されている傍ら、他の活動も並行して行う先生も所属されていると伺いました。
松井:そうなんです。弊所で興味深い活動をされている先生としては、
・弁護士YouTuber 久保田康介先生(https://www.vbest.jp/member/detail/349)
・作家五十嵐優貴先生(PN:五十嵐律人)(https://www.vbest.jp/member/detail/461)が所属しています。
こういった弁護士以外の活動も弊所としては出来る限り応援していていきたいと考えています。久保田先生はもともと弁護士Youtuberとして入所されましたし、五十嵐先生は小説家としての活動も継続しつつ、弁護士業にも取り組みたいということで入所されました。また、小説家としての視点もマーケティング等にいかせるのではないか・・と感じ、それを可能な事務所として、ベリーベストに入所されたと聞いています。
ぽん:御所は全国各地に49事務所を構え、弁護士総勢280名超で運営されていらっしゃいます(※2021年7月現在)。様々な分野の部署ごとに専門チームを結成されているのでスペシャリストとしての専門性を身に付けることができるとともに、一人の弁護士が複数の専門チームを掛け持ちすることでゼネラリストとしての研鑽を積むことが可能と伺いました。この専門チームの選択はエントリー段階で行うのでしょうか。
松井:73期の先生方には、入所から3か月目の支店研修が一通り終わった頃に専門チームの選択をして頂きました。大きな組織である以上、どうしても100%本人の希望が通るというわけではないのですが、所属チーム数の増減や変更は可能ですし、実際にそうしている弁護士もいます。
例えば、私自身は労働分野のマネージャーなので労働部門に所属しつつ、その他にも、企業法務、交通事故、削除請求、B型肝炎のチーム等にも所属していますし、比較的最近発足したアスベストのチームにも参画しました。
ぽん:チームに所属した後、実際に事件に関わるまではどのような流れなのでしょうか。
松井:弊所では当番制を設けており、自分が当番のときに新件として相談が入った場合は、法律相談を受けます。そして、その事件を受任した場合には、自分の担当事件になるという流れです。
誰がどの程度当番として入るかは各マネージャーが決めるのですが、この際は各弁護士の受任率が参考にされることが多いですね。もちろん、その時々に応じて「この分野の当番をもう少し増やしてほしい、ここは減らしてほしい」等の各弁護士個人の希望を聞くようにしています。方針はマネージャー等との相談、面談を通じて柔軟に調整するよう善処はしていますが、やはり、事務所として取扱分野が定まっている以上、事務所から業務を指定することももちろんあります。
ぽん:「この人にはこの分野が向いているな」というように、周囲が適性や才能を見抜くこともあると思います。当番はマネージャーの先生が決定されるとのことですが、新人弁護士のある分野に関する特性、きらっと光る才能のようなものを見つけて当番を割り振られることもあるのでしょうか。
松井:やはり才能や適性がある人は目立ちますので、こういった評価は所内で共有します。各分野のマネージャーが「これは」と思った人を誘って頑張ってもらった結果、弁護士2年目にしてサブマネージャーに昇格した弁護士など、すぐに頭角を現す方も実際に複数名いらっしゃいますね。
3.大規模事務所で弁護士一人ひとりのコミュニケーション能力を育成する仕組みとは?
ぽん:御所のホームページを拝見し、「法律相談はクライアントへのプレゼンテーションの機会」という言葉にハッとさせられました。大きな法律事務所ではありますが、受任しなければ仕事にならない以上、所属弁護士ひとりひとりの営業能力が重要になるのは当然のことのように思います。
他方で、御所のように、人数が多く大規模な事務所では弁護士一人ひとりの営業能力やコミュニケーション能力にもバラつきが出てしまうと思いますが、この点はどのようにフォローされているのでしょうか。
松井:弊所では一人一人の先生に事件の「受任力」は意識して頂いていますが、おっしゃる通り、各弁護士の受任率にはどうしてもバラつきが出てしまうので、2つの面からフォローしています。
1つは、分野及びエリアのマネージャーと共に受任率が低い原因を探ります。知識の不足ゆえに自信の無さが垣間見える法律相談になっていないか、受任への何らかの障壁がないか等、意識改革も含めてあらゆる面から受任率の向上にアプローチしていきます。
もう1つは、法律相談で行う実際のコミュニケーションをダイレクトに改善していくこともあります。実際の法律相談に同席するなどして、良いところは褒め、改善すべきところは適切に指導をすることで、着実な受任率の改善を目指しています。
ぽん:受任率は各個人の問題ではありますが、事務所全体に関わる事項ということで、大きな事務所だからと個人に任せすぎることなく一丸となって取り組まれていることがわかりました。
4.ベリーベストの採用の視点―人柄を徹底して伝えてほしい
ぽん:御所が採用の際に最も重視されている点について教えてください。
松井:弊所では人柄(誠実さ、コミュニケーション能力など)を重視しています。
成績や司法試験の結果も大切かもしれませんが、それらが良ければ弁護士として優れているとは限りませんし、弁護士としての能力は、勉強をしようという姿勢さえあれば自ずと成長します。その反面、例えば事件を受任するためのコツやテクニックを教えることはできても、人柄それ自体はそう簡単には変えられません。弁護士がサービス業であることを理解し、それを体現できる人柄を持っている方に、ぜひ入所して頂きたいと思っています。
ぽん:御所は大規模かつ取扱分野も多いので、入所を希望する就活生も多数おられるかと思います。先生も採用を担当されていると思いますが、その中で『目立つ履歴書』というのはあるでしょうか。
松井:私もすべての書類に目を通しているわけではないのですが、どうしても似通った履歴書をよく目にします。弊所のホームページをよく見て書いて頂いたんだなぁと有難く思うのですが、やはりそれだけだと目を引く履歴書にはなりづらいです。
私個人としては、これまでの経験やなぜ弁護士を目指したのか等、その人の「人となり」がわかるような記載に非常に興味を持って拝見しています。また、細かいことまで気にして意識することができる方、こだわりを持って仕事をすることができる方、きちんと文章が書ける方と一緒に働きたいと気持ちが強いですね。
これは私の個人的な話なのですが、弁護士が専門家として裁判所に提出する文書は誰がみるかわからないですし、私は非常にこだわって作成しています。また、裁判等で証拠を見るときにどこまで丁寧に見て、発見すべきことを確実に発見できるか。隅から隅まで読んで、必要な情報を見落とさない。こういった点は自分の意識ひとつで変えられるので、個人的にはこのような点にも配慮できる方は高く評価したいと考えています。
この前、座談会で同じようなことをいったら、弊所の弁護士に「そんなこと言うと、嫌われるよ(笑)」と言われてしまいましたが…
ぽん:御所のように大きな事務所になると、クライアントも弁護士個人ではなく事務所自体に依頼している感覚になることが多いと思いますので、弁護士のクオリティ=事務所のクオリティになりやすいと思います。松井先生がおっしゃった観点を、私自身も気を付けていこうと思います。
それでは、先生から就活生にエールを一言お願い致します。
松井:弁護士業はそれなりに大変ですが、とてもやりがいのある仕事だと思います。
困っている人は日本全国にまだまだ大勢います。ベリーベスト法律事務所は今後も新規オフィスをオープンしていく予定ですが、みなさんの力をぜひベリーベスト法律事務所で発揮して頂きたいと思っています。事務所説明会や採用エントリーへのご応募お待ちしています!
5.ミライの弁護士について考える―信頼を勝ち取る弁護士へ
ぽん:最後に、AIやテクノロジーの変化に伴い、弁護士の業務分野の一部は縮小傾向になると言われています。今後の新時代も活躍できる法律事務所及び弁護士とはどのような存在であると考えられるでしょうか。先生のご意見をお聞かせください。
松井:もちろん、100年後の世界がどうなっているかわかりませんが…
弊所が力を入れている受任力や、採用の際に意識している人柄といった面にも関係しますが、弁護士が個人のクライアントから依頼してもらう中で、人対人のコミュニケーションは避けられないものだと感じています。
人柄で信頼してもらえることもあれば、反対にクレームに繋がることもあると思うので、クライアントの目線に立ち寄り添っていける弁護士としての振る舞いといった、AIにはできないことを日々探求していける弁護士を目指すべきだと考えています。また、この点ではAIに負けたくないとも思っています。
ぽん:松井先生が終始一貫しておっしゃっている「自ら主体的に学び、成長する」姿勢の重要性はこれからの時代も変わらないということですね。
本日は貴重なお時間、そしてお話しをありがとうございました!
6.編集後記
以前は1冊の本を読む等、ある程度の時間を掛けた行動なくして得ることが出来なかった「自己成長のためのエッセンス」ですが、SNSの普及により、わずか数秒足らずで簡単に摂取できる時代になりました。
他方で、自ら課題を設定し、取り組み、修正する…といった、摂取した知識やノウハウを「自分のものにする」ためのトライ&エラーを自ら繰り返す必要に迫られています。
松井先生が終始おっしゃっていた「弁護士としての成長は自らの主体的な取り組みにより生まれる」ということは、デジタル化が進み、様々な点で便利になった現代だからこそ必要なことだと痛感させられました。
便利さや効率化されたものばかりに頼るのではなく、自分の現在地を適切に把握し、成長のためのトライ&エラーを愚直に繰り返すことができる弁護士が、真に評価される時代なのかもしれません。
「巨大な町弁」の中で、理想とする弁護士像を追い求めていきたいとの熱い思いをお持ちの方は、是非ベリーベスト法律事務所の事務所説明会又は採用エントリーに挑戦してみてはいかがでしょうか。
ベリーベスト法律事務所へのエントリーがあなたの夢や目標を叶える一歩になることを心より願っています。