司法試験(倒産法) written by 76期弁護士 佐藤 和樹
1 はじめに
このコラムでは、司法試験・予備試験の倒産法の勉強方法について、詳しくご紹介します。
倒産法、という選択科目のイメージは皆さんどのようなものでしょうか。なんとなく、会社や個人が倒産して・・・というイメージはあるものの、法的にどのようなことを学習するのかなかなかイメージが持ちにくい方も多いと思います。
そこで、このコラムでは、司法試験・予備試験の倒産法の勉強方法について、具体的に掘り下げてご説明します。
このコラムを読めば、倒産法の勉強方法がわかりますので、ぜひご一読ください。
2 倒産法の特徴について
倒産法とは、破産法、会社法上の特別清算、民事再生法、会社更生法の4法の総称です。そのため、倒産法という法律それ自体はありません。
司法試験では、破産法と民事再生法の各分野から1題ずつ出題される一方で、予備試験の倒産法では、破産法と民事再生法のいずれか、あるいは破産法と民事再生法の比較問題が出題される傾向にあります。
したがって、司法試験・予備試験の問題で出題されるのは、破産法と民事再生法になりますので、倒産法の勉強をするにあたっては破産法と民事再生法について重点的に学習を進めることが肝要です。
倒産法は司法試験や予備試験受験者が比較的多く選択する科目の1つです。そのため、倒産法を学習するうえで必要となる教材(基本書や参考書、問題演習本等)は大変豊富です。倒産法の基本書は、比較的厚めである印象を持ちます。もっとも、全てを暗記・理解する必要はありません。
あくまで、司法試験・予備試験で求められる倒産法の知識や理解は、限定的ですので、出題範囲や傾向などを事前につかむことで、十分対策することができます。
3 倒産法の勉強法
ここでは、司法試験科目の1つである倒産法の勉強法について詳しくご紹介します。
1 破産法→民事再生法の順で勉強する
まずは、何より破産法と民事再生法の勉強の順序が大切です。両者は共通点が多いものの、異なる部分も多々あります。そして、両者を理解するには前提知識として破産法の理解を深めてから、民事再生法の学習をすると非常に効率がよいです。民事再生法には、破産法の内容及び理解を前提とする知識や論点が数多く存在しますので、破産法の学習なくして民事再生法を先に学習してしまうと、結局のところ、よくわからないことにもなってしまいます。
例えば、令和4年度の司法試験問題(第2問・設問1)を具体例に見ていきます。
この問題で問われていることは、直接的には民事再生法所定の再生手続開始に関する要件及び趣旨を踏まえて、裁判所が再生手続開始の決定をすることができるか否かです。ですが、裁判所が再生手続開始の決定をすることができるか否かは、再生手続開始の申立てが必要であり、当該申立ては、再生手続開始の原因があれば、申立ての棄却事由がある場合を除いて再生手続開始の決定をすることになっています。そのため、再生手続開始の原因を具体的に見ていくと、当該原因の根拠となる条文は民事再生法にありますが、実質的な内容は破産法に依拠しています。
このように、民事再生法は破産法の内容を前提とする条文構造になっており、実際の司法試験本試験においても破産法の理解を前提とした民事再生法の問題が出題されています。
したがって、倒産法を勉強するにあたり、まずは破産法を学習し、破産法の全体像を理解したうえで民事再生法の学習に取り掛かることが重要であり、また最も効率がよい学習方法であるといえます。
2 条文を勉強する
次に、倒産法の学習では条文学習が非常に重要です。当然ながら、他の科目においても条文を理解し、条文操作をすることが何より大切であることは言うまでもありません。
そのうえで特に倒産法においては、条文を意識した勉強が大切です。上述したように倒産法の学習は、破産法→民事再生法の順で学習することが最も効率がよい学習であることをご紹介しました。
その際、民事再生法は破産法の理解を前提としているとしましたが、これは条文操作においても同様です。民事再生法の条文はその内容を実質的には破産法と同一にしていることが多々あります。そのため、民事再生法の条文を参照しつつ、破産法の条文も同時に参照することが大切です。両者の条文はリンクしていることがあるため、条文操作を丁寧に行わなければ問われている条文を探しだし、適切に摘示することは困難です。
さらに、本試験という限られた時間内で条文操作を行う必要がある以上、事前準備としての条文操作に慣れておくことは他の受験者との間で差をつけるという意味でも重要なことです。
したがって、(他の科目でもそうですが)条文を意識した勉強をすることが大切であるといえます。
3 判例百選の学習
また、倒産法の学習をするにあたり、判例百選をもとに学習するとよいです。近年の司法試験倒産法の問題では判例百選掲載の有名な事例をベースにした問題が出題される傾向にあります。ですので、問題演習をすることも大切ですが、判例百選に掲載されている判例の理解も同様に重要といえます。
判例百選の学習をする際には、判旨だけでなく、当該事例の具体的な内容にも着目しましょう。多くの受験生は判旨(及びその理由)だけに着目しがちです。ですが、なぜそのような判旨になったのかを理解するには、問題となった事例はいかなる事実関係で、いかなる当事者が、どのような主張をしているのか等を理解しなければいけません。
したがって、判例百選の学習は重要であるとともに、百選掲載の判例学習においては事実関係に着目して勉強をすることも大切であるといます。
4 過去問演習を行う
最後に、過去問演習も必ず行いましょう。倒産法の問題演習書は様々な良書が出版されていますが、問題演習書に手を出す前にまずは過去問演習をすることが肝要です。
過去問演習を行うことで、司法試験出題者がどのような意図で、どのような形式で問題を出題しているのかを知ることが出来ます。出題形式に慣れておくだけで、本試験の際に緊張せず、余裕をもって試験に臨むことができます。
また、過去問演習を行うことでどの論点が出題されているのか、そして論点の出題の仕方として問題文にどのような事実がちりばめられているのかを知ることもできます。
したがって、倒産法の学習では判例百選の学習とともに、過去問の演習も必須です。
4まとめ
以上、司法試験の選択科目の1つである倒産法について、具体的な勉強方法や試験内容、出題傾向などについてご紹介しました。
倒産法は司法試験選択科目の中でも比較的受験者が多い科目の1つです。そのため、受験者間でのレベルも高いため、適切に対策を取らなければ合格点を勝ち取ることはできません。ですので、本コラムを参照して頂き、倒産法の勉強方法や学習ポイントを抑えて頂ければ、より確実に合格点を取ることが出来ます。
ぜひ、本コラムを何度も読んで頂き、司法試験倒産法の学習に役立てて頂ければと思います。