パソコン試験導入について written by 76期弁護士 佐藤 和樹
目次
1 はじめに
法務省は、2026年(令和8年)から司法試験のパソコン受験開始の方針を発表しました。そこで、今後、司法試験の受験方法が従来の手書き方式から、パソコン受験方式に変更されることが現実化してきました。
受験方式が大きく変化することを受け、今の段階から何か対策できることはないか、注意すべきポイントはないか等、悩まれている方は大変多いと思います。
そこで、この記事では、令和8年度から始まるであろうパソコンでの司法試験受験について、今後の対策を踏まえつつ、ご紹介したいと思います。
2 転換時期と理由
1 いつパソコン受験へ転換するのか?
法務省の発表によりますと、司法試験と予備試験の受験方式について、2026年(令和8年度)から、パソコンをして解答する方式(いわゆるCBT方式)を導入するとのことです。
パソコン受験であるから自宅にて受験ができるとも思いがちですが、あくまで、受験会場に設置されたパソコンを利用して解答することになるため、自宅受験は想定されていません。
2 なぜパソコン受験を導入するのか?
大きな理由としては、実務においても、デジタル化が加速しておることが挙げられます。
現在、民事裁判手続きにおいては、Teamsを活用した書面の提出がなされているなど、すでに裁判手続きのデジタル化が進んでいます。
そのため、実務化登用試験でもある司法試験(及び予備試験)においても、同様のデジタル化が進んでいくのも自然な流れであると思います。
3 パソコン受験の内容
現時点では、論文試験のみパソコン受験となるのか、短答式試験もパソコン受験となるのか不明確なところです(短答式試験のみ従来型の手書き、論文試験はパソコン受験という形式も十分にあり得ます)。
ですが、少なくとも論文試験においては、いずれパソコン受験に転換することは間違いないといえます(具体的なパソコンの種類なども今後も法務省の発表を待つ必要があります。)。
4 具体的な対策
1 タイピング練習をしておきましょう
まずは、タイピングの練習をしておくことが大切です。答案作成をパソコンで行うということは、どれだけ早くタイピングをすることができるのかによって答案に記載できる文字数が変化します。
そのため、あまりにタイピングが遅いと、その分答案作成時間も遅くなってしまい、他の受験生と大きな差が生じてしまうおそれがあります。
そこで、1つの目安としては、キーボードを見ることなく、デスクトップだけを見ながらタイピングする能力(ブラインドタッチ)は最低限身につけておく必要があるでしょう。タイピングの練習は、無料のアプリやソフトなどを活用すると楽しく、効率的に練習できると感じます。
※弁護士求人ナビおススメ:【E-typing】https://www.e-typing.ne.jp/
2 答案構成時間・作成時間を再度把握しておきましょう
手書きの頃と違って、タイピングで答案を作成する場合、より多くの文字を答案に反映することができると思います。そこで、答案の構成時間と作成時間を再度、パソコン受験用に確認しておくことが肝要です。
また、パソコン受験に伴い、司法試験の問題も手書きの場合と比較して、長文かつ問題数も多くなることも想定されます。
このようなことからも、改めて、答案の構成時間及び作成時間を確認しておくことが重要です。
3 パソコン受験式の模擬試験を受験しましょう
法務省が司法試験(及び予備試験)のパソコン受験導入の発表をした流れを受け、今度の司法試験(及び予備試験)の模擬試験もパソコン受験型に対応した模試になることが想定されます。
少しでもパソコン受験に慣れるためにも、パソコン受験に対応した模擬試験は積極的に受験していきましょう。
5 注意点
パソコン受験に転換する際、つきものなのが機材トラブルです。
試験会場で利用するパソコンが当日、うまく作動しないことや思っていたのと違う動作をすることも十分考えられます。
その際は、当たり前のことですが、何より焦らずに冷静に対応することが重要といえます。試験監督員に指示を仰ぐなどし、ご自身で対応可能な範囲を除いては、無理にご自身で解決しないようにしましょう。
また、試験制度が大きく変化するに伴い、制度の変わり目には混乱や不安はつきものです。受験生だけでなく、司法試験委員会側もはじめての試みですので、互いに慣れないことが数多くあるでしょう。
そのため、情報には敏感になり、上述した対策を具体的になるべく早めに行っておくことが大切です(特に、法務省の司法試験に関する公式見解は常に気にしておくべきでしょう)。
6 最後に
令和8年度司法試験受験を考えている方にとっては、パソコン受験という新しい試みに不安を抱いている方も多いと思います。
ですが、皆が同じことであり、今できる具体的な対策を1つ1つ行うことが大切です。まだまだ具体的な情報が発表されていませんが、今後、法務省から司法試験について続報があるかと思いますので、常に意識して情報に遅れないように気を付けましょう。