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春に寄せて―東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻での3年間とその反省 Written by ぽんぽん

春に寄せて―東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻での3年間とその反省 Written by ぽんぽん

目次

0.はじめに
1.法科大学院入試について
2.東大ロー1年目の反省
(1)①条文をよく読むクセを付けていなかった、②条文の趣旨、文言の定義、基本的な規範・論証を覚えようとしなかった
(2)③司法試験の過去問をよく検討しなかった
3.東大ロー2年目の反省
(1)①司法試験合格には「自主ゼミ(を組むこと)が重要」と思い込んでしまった
(2)②基本書や問題集をこなすことに重点を置いてしまった
4.東大ロー3年目の反省
(1)①丸暗記に走ってしまった
(2)②色々な人からのアドバイスや情報を収集すれば合格に近づけると誤解してしまった
5.東大ロー修了後から司法試験に合格するまで
6.3年間の法科大学院生活で得られたもの

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0.はじめに

2014年4月、私は住み慣れた関西の土地を離れ、一人上京しました。

東京での新居は新大塚の狭い築50年のワンルームマンション。
淡いグリーンに塗られた壁に、白っぽい木目調の床のこじんまりとした部屋を見て、
「ここから東大での日々が始まるんだ…!」と新生活に心躍らせたことを今でもよく覚えています。

もっとも、私にとって、東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻(以下、東大ローとします。)での3年間は、勉強面に着目すると反省と後悔の連続でした。
成功体験はほとんどなく、あらゆる自信を木っ端微塵に打ち砕かれた『残念な3年間』とも言えるでしょう。

今回は、私の東大ローでの反省の記録を書いていきます。
今年の春に法科大学院へ入学ないし進級される皆さんが、この記事から何かしらの参考点を見つけ、余計な回り道をすることなく、より早い段階で司法試験に合格されることを願っています。

 

1.法科大学院入試について

私は公立大阪市立大学法学部の出身です。
大学3年生の秋に法科大学院進学を決めましたが、それまでは中国への長期留学など法律以外の勉強に熱心に取り組んでいたため、既修者コースへの進学は難しいと感じました。

そこで未修者コースへの進学を決意し、法科大学院入試対策として主に適性試験及び小論文の勉強を開始しました。ダブルスクール等には通わず、適性試験過去問集と大学院受験対策用の小論文テキストを購入して繰り返し解いていたと思います。

現在は既に廃止されていますが、私が受験した当時、法科大学院進学希望者に向けて適性試験が実施されていました。受験校はこの適性試験の結果を見て決めようと思っていたのですが、2回の適性試験のうち1回は上位10%に入る好成績を取得できたので、東京大学・大阪大学・神戸大学の各法科大学院に出願、3校すべてから合格通知をもらうことができました。

いずれも実績ある有名な法科大学院でしたが、実家からの距離的にどこに進学しても下宿になること、せっかく東大に合格したんだし、人生の記念に行っておこう!という極めて安易な考えから東大ロー進学を決めました。

 

2.東大ロー1年目の反省

①条文をよく読むクセを付けなかった

②条文の趣旨、文言の定義、基本的な規範・論証を覚えようとしなかった

③司法試験の過去問をよく検討しなかった

(1)①条文をよく読むクセを付けなかった、②条文の趣旨、文言の定義、基本的な規範・論証を覚えようとしなかった について

約7年に及ぶ司法試験受験生活を終えた今、司法試験における基本事項の重要性を痛感しています。

ここでの「基本事項」とは、簡単に言うと「条文」、「条文の文言の定義や規範」、「文言について争いがある場所(≒論点)」のこと。これらについてどれだけ理解を深め、覚えられるかが法科大学院3年間での成績ひいては司法試験の合否にまで影響したと考えています。

法科大学院に進学した1年目、私は定義や規範を覚えるどころか、法曹の発想の起点となる条文を1回1回丁寧に引くことすら怠ってしまいました。

結果として、私が書く答案一つ一つが条文による根拠がないものになってしまい、この先3回にわたる司法試験不合格の連鎖を引き起こす引き金となりました。このクセにようやく気付いたのは4回目受験の年になってから。矯正するにはかなりの時間がかかりました。

よく言われる「定義」「規範」「論点」のいずれも、ほとんどの場合、条文の文言からスタートします。

司法試験はもちろんのこと、法曹になってからも条文が意見の拠り所になるのですから、勉強をする際にはどの科目であっても必ず条文を引き、丁寧に参照しつつ、教科書や論証集、問題文を読むクセを早い時期から付けることをおすすめします。

 

(2)③司法試験の過去問をよく検討しなかった について

法科大学院入学当初、「私は未修だから、司法試験なんてまだまだ解けない」と思い、司法試験過去問をじっくり読み、これを書くにはどう勉強すべきか検討することをしませんでした。

「まだまだ解けない」こと自体は大正解だったのですが、法科大学院の終着点は司法試験にあるわけですから、司法試験短答式試験・論文試験のいずれにも目を通し、『入学時点=スタート地点』と『司法試験合格=ゴール地点』までの距離感は把握しておくべきでした。

この距離感を適切に把握できると、現時点で自分が足りないこと(論点抽出ができない、書き出しがわからない、定義が頭に入っていないetc…)について検討する機会を持つことができるので、今後の勉強の方針が立てやすくなります。

最近ではTwitterやブログ等で多くの合格者、司法試験講師の方々が情報発信されています。自分の弱点やできていないことが把握できれば、後はこれらの中から自分に合った克服方法を探し、こつこつとトライ&エラーを繰り返すのみです。

「まだ解けないし」「今見たら、覚えてしまって直前に使えないかも」といったことばかりに気を取られ、『なぜ過去問が重要なのか』その意味を含めて十分に検討しなかったことについて本当に後悔しています。

周囲の未修出身1回目合格者は早い時期から司法試験過去問や出題趣旨、採点実感に取り組んでいた記憶があることからも、『過去問にいつから取り組むか(単に解いたり、読んだりするではなく)』は明らかに司法試験1回目合格への分岐点であったと思います。

 

3.東大ロー2年目の反省

①司法試験合格には「自主ゼミ(を組むこと)が重要」と思い込んでしまった

②基本書や問題集をこなすことに重点を置いてしまった

(1)①司法試験合格には「自主ゼミ(を組むこと)が重要」と思い込んでしまった について

合格した先輩方や同級生たちから合格の秘訣を聞くと「自主ゼミの仲間同士で切磋琢磨した」「自主ゼミがあったから合格できた」等、自主ゼミの登場率は非常に高いです。
法科大学院に入学したらとりあえず自主ゼミを組んで、定期試験や司法試験の過去問を解かなきゃ…と思っている方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

実際に私もいくつかの自主ゼミを未修・既修メンバー双方と組んでいましたが、実は、あまり良い思い出はありません。

自主ゼミは参加者全員にとって何らかのメリットがあるか、成績優秀者がリーダーとしてみんなを引っ張る(教える)場合にうまく進むものですが、私は十分な基礎知識を付けることなく進級してしまったため、メンバーに十分なベネフィットを提供することができませんでした。最後までやり切った自主ゼミもいくつかはありますが、多くは優秀なメンバーがどんどんゼミを抜けたり自然消滅するなど中途半端に後味の悪い終わりとなってしまい、自業自得ではあるものの精神的に辛い思いもたくさんしました。

自主ゼミの真価は、『数学のように決まった答えがない法律の試験問題について多角的に検討し、より良い解答にたどり着くこと』にあると思います。
最近は多種多様な問題集や司法試験解説本も登場しているので、自主ゼミを組まなければ定期試験・司法試験を乗り切れない、良い成績が取れないということもないはずです。

自主ゼミを組むこと自体にこだわらず、自分の現在のレベルをよく見極めた上で『良い仲間に出会えたら是非組んでみる』、とロー生活のオマケのように考えるくらいがちょうど良いと今では思っています。

 

(2)②基本書や問題集をこなすことに重点を置いてしまった について

2015年当時、いくつかの基本書や問題集が流行っていました。

「合格者の先輩が使っていたから」「著名な先生が書いているから」というだけの理由でこれらを購入し、真っ向から読み始め、とりあえず最後までやり切ることを繰り返すこと3回以上…ふと気づけば2年生も終盤にもかかわらず、ほとんど何も身についていませんでした。

原因は『何のためにその基本書・問題集を使うのか』考えず、闇雲に進めていたからです。

『私は基本事項すらちゃんと覚えていないし、論点抽出も出来ない⇒この問題集で、この問題からどういう論点を抽出できるかを学ぼう⇒ついでに、その論点に行き着く条文の流れと必要な定義、規範、論証を確認して覚えていこう』というように、基本書・問題集を使って自分の弱点を克服すること(使用目的)を考えていれば、基本書・演習書を用いた勉強のみならず、法科大学院での日々の予習・復習でも司法試験に直結する学習ができたのに、と今でも後悔しています。

司法試験過去問をよく分析し、自分が合格ラインに達するために足りない部分=弱点を知ることは、『司法試験突破に向けて日々自分が何を勉強すればいいのかを自分自身で考え、決定できるようになる』という大きなメリットがあります。

司法試験は科目数が多い上、各科目の範囲も膨大なので、何をするか?日々選択と決断を迫られることになります。弱点を正しく把握していれば選択と決断がスムーズかつ的確にでき、日々の学習ひとつひとつに意味付けができるので、結果として司法試験合格に近付きやすくなると考えています。

 

4.東大ロー3年目の反省

①丸暗記に走ってしまった

②色々な人からのアドバイスや情報を収集すれば合格に近づけると誤解してしまった

(1)①丸暗記に走ってしまった について

法科大学院で2年も過ごしたにもかかわらず基礎知識すら十分に入っていなかった私は、司法試験に焦るあまり、ついに『丸暗記』という最悪な手段に出てしまいました。

司法試験では、確かに暗記が必要不可欠です。しかし、例えば民法177条の「第三者」の定義を丸暗記しているだけでは足りず、どういう場合にその文言を解釈する必要があるのかを理解していなければ司法試験の問題に正しく答えることはできません。

私がこの一見当たり前の『暗記の本質』に気付いたのは、法科大学院を卒業から3年も経ってからのことでした。

未修コースでは、合否が明確に出る法律系試験(法科大学院入試など)の受験経験がない方が大半かと思います。
法律系試験に一度でも挑戦していれば、法律に関する事項の暗記を経験できるので暗記の本質に気付きやすいと思うのですが、経験がないとどうしても丸暗記に走るなど、苦しいだけの効率の悪い暗記になりがちです。

自分の暗記が『単なる丸暗記』になっていないか、暗記時に条文や判例集を開いて随時確認しているか、なぜその論点があるのか理解しているか等、自問自答を繰り返しながら一歩ずつ司法試験に役立つ暗記を実践して頂ければと思います。

 

(2)②色々な人からのアドバイスや情報を収集すれば合格に近づけると誤解してしまった について

東大ローには優秀な先輩、同級生が本当にたくさんいたので、求めれば必ず誰かしらがアドバイスや情報を与えてくれました。その上、デジタル全盛期の今、Twitter等には司法試験に関する有益な情報を発信されている方が多数いらっしゃるため、いつでも簡単に有益な情報を得ることができます。

しかしながら、私はそのアドバイスや情報が『自分にとって必要なものなのか』吟味することなく鵜呑みにし、結局何のためにそれに従っているのかわからない状況になってしまいました。単なる時間の浪費をしてしまったのです。

未修者コースは明暗が分かれやすいコースです。

良い成績を修める学生はどんどんと自信を付け、弾みがついた状態で司法試験に臨むことができる一方、なかなか成績を上げられずにもがいている学生はどんどん自信をなくし、自分の為すこと、考えることすべてに不安を覚え始めます。

「こんな調子で受かるのだろうか」「こんなやり方で大丈夫なのか」等、自己決定をしても不安のあまりそれを信じて行動することができなくなっていくのです。

そのため、ネットや先輩合格者といった『成功者』の意見を鵜呑みにし、それを吟味することなく行動した結果、上手くいかずにまた別の情報に頼るという悪循環が始まってしまいます。

この悪循環に陥らないように、また抜け出すために、まずは自分の司法試験における弱点を正確に把握し、『このアドバイスor情報は自分の弱点克服に役立つか』という判断基準を確立することをおすすめします。

十人十色という言葉があるように、合格者の軌跡をたどれば合格するのではなく、あなた自身の軌跡で司法試験合格までたどり着く必要があります。自分にとって必要な情報だけを取捨選択できるように、まずは判断基準の確立から始めてみてくださいね。

5.東大ロー修了後から司法試験に合格するまで

2017年3月に東大ローを修了後、4回目となる令和2年司法試験に合格するまで、社会人として実家経営の学習塾でフルタイム勤務をしながら司法試験の受験勉強を続けました。

その際の具体的な勉強方法や使用教材、司法試験の実際の成績等については、私のTwitter(@ponponazarashi)やnote(https://note.com/ponponazarashi)にて詳しく記録していますので、ぜひ併せてご覧頂ければと思います。

 

5.3年間の法科大学院生活で得られたもの

東大ローでの日々は、勉強面については後悔と反省しかありませんが、その他の面では素晴らしい友人・優秀で自慢の同期に恵まれた充実した3年間でした。

当時の私はあまりにも法律に疎く(法科大学院生なのに)、輪に入って積極的に議論を交わすことはできませんでしたが、優秀な同級生たちの存在は議論以上に重要な気付きを与えてくれました。
それは、世の中にはこんなにも優秀で、単に勉強ができるできないを超えた次元にいる人たちが大勢いること。彼らに頭脳にまつわることでは一生敵わないであろうということです。

この気付きから、私は『仮に弁護士になれたとして、自分の強み・勝機はどこにあるのか?』についてかなり早い時期から真剣に考え始め、自分の中で弁護士としての方向性を定めることができました(自分の対司法試験の弱点についても同じだけ考えられればよかったのですが)。結果として練り上げられた自己PRの作成に成功し、多浪にもかかわらず多数のサマークラークに参加・是非働きたい!と思える法律事務所からの内定を頂くことに繋がったと思います。

法科大学院入学時から数えると約7年にも及ぶ受験期間をようやく終えることができましたが、合格したから苦い経験がすべて昇華されるわけではありません。私の心の中には、「あの時、こうすればよかった」という深い後悔が今でも多数渦巻いています。

法科大学院から始まったこれらの苦い経験・失敗談をこれから司法試験を受験される皆さんにお伝えしすることで、たった一人でも司法試験合格までの道のりをショートカットできればと願いながら、今後も執筆を続けようと思っています。

最後までお読み頂きありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願い致します。

 

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