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司法試験合格に向けた計画策定~法科大学院生は予備試験を「必ず」受験すべきなのか~(下)

司法試験合格に向けた計画策定~法科大学院生は予備試験を「必ず」受験すべきなのか~(下)

1.はじめに

こんにちは。おひさまです。
これまで2回にわたって法科大学院生の予備試験受験に関する記事を公開させていただきましたが、今回が最終回となります。前回の記事から間が空いてしまいすみません。
前回の記事では、予備試験受験者・合格者の回答をご紹介し、予備試験を法科大学院在学中に受験することの利点についてみていきました。
最終回となる今回は、法科大学院在学中の予備試験未受験者の回答を公開していきたいと思います。

2.アンケート結果の概要 ~予備試験未受験者編~

未受験者の方には全部で6名の方にご回答いただきました。

Q1:司法試験合格までの経緯を教えてください。

Hさん
大学卒業→私立法科大学院入学→同大学院修了→司法試験合格
Iさん
大学卒業→社会人→私立法科大学院入学→同修了→司法試験合格
Jさん
大学卒業→社会人→私立法科大学院入学→司法試験合格
Kさん
大学卒業→国立法科大学院修了→司法試験合格
Lさん
早稲田大学卒業→同大学院法務研究科入学・卒業→司法試験合格
Mさん
大学卒業→私立法科大学院入学、卒業→司法試験合格

Q4―1:予備試験を受験しなかった理由を教えてください。また、法科大学院入学以前に予備試験を受験したことがある場合は、入学後には受験しなかった理由も併せて教えてください。

Hさん
予備試験は一度も受けたことがありません。大学在学中はサークル活動にかなりの時間を割いていて、勉強が進んでいなかったので、予備試験を受けるという発想に至りませんでした。
法科大学院に入学してからは、予備抜けするメリットが感じられなかった(具体的には、学費については給付型の奨学金をもらえていて経済的負担が少なかったし中退すると負担が増えてしまう、学者からの講義を受ける機会を投げ出すのはもったいない)ので受けませんでした。
Iさん
勉強に使う時間が限られている分,ロースクールの学修だけに集中したかったから。
Jさん
優先順位としては①家事育児、②各種奨学金(下記参照)、③司法試験一発合格となっており、①~③をクリアしながら予備試験の合格まで達成する能力が自分にはないと判断したから。
<①に関して>
・予備試験の日程が土日にかかり、育児に支障をきたすため。
・仮に土日にベビーシッター等を使って予備試験に出願したとしても、子どもが風邪を引いた場合にはベビーシッター等には頼れず受験できないことになるので、高い出願料が無駄になると思ったため。(司法試験の際には万が一に備えて自分以外に病児保育をしてくれる人を2人確保しておきましたが、予備試験にまでそれをする金銭的余裕がありませんでした。)
<②に関して>
・ロースクールで給付型奨学金(授業料全額相当)をいただいており、奨学金を継続して給付していただくためにロースクールでの成績を重視したかったため。
・日本学生支援機構から無利子での貸与型奨学金(月8万8,000円)をいただいており、卒業時の成績次第では全額返還免除していただけることから、やはりロースクールでの成績を重視したかったため。
<その他:一年次特有の理由>
・1年次には妊娠しており、無理して予備試験の対策をするよりもしっかり休養をとって無事に出産したかったから。
・1年次には夫が単身赴任中で長女のワンオペだったこと、長女が待機児童になっており、保育園が見つかるまで一時保育所を利用していたこと、授業時間外にまで一時保育所に子どもを預ける金銭的余裕がなかったことから、授業時間外はすべて育児に充てており、その中でロースクールの授業の予習復習をこなすだけでも精いっぱいだったから。
Kさん
法科大学院の勉強や試験対策が疎かになってしまいそうだったから。
Lさん
ロー入学前に受けたのは、お遊び感覚で受けてました。周りも受けていたし、とりあえず受けてみるかという程度で、特段理由もなかった。
その後受けなかった一番の理由は、生き急ぎたくなかったというと聞こえがいいけれど、学生生活を2年間延長するのもいいなと思ったというのが正直なところ。奨学金も受けられ、経済的にも親に負担をかける必要もなかったので、学生生活の延長を2年しつつ、かつじっくりと腰を据えて勉強するのも悪くないと思ったというのもあった。
あとは、ローに入って、予備試験の勉強を両立させる自信もなく、二兎を追って一兎をも得ずとなるなら、ローの成績を優先させようと考えたところもある。
Mさん
大学在学中は、法曹になるための勉強に身が入らなかったこと、予備試験は自分には難しすぎると思って諦めていたことから受けませんでした。法科大学院在学中は法科大学院の勉強で忙しかったこと、わざわざ受けなくても法科大学院卒業して受けたほうが早いと思ったことから受けませんでした。

Q4-2:法科大学院在学中、どのようなことに力を注いでいましたか。

Hさん
力を注いでいたというよりも、講義の予習にだいぶ時間をとられていました。
Iさん
講義の復習を定期試験までに終わらせる。日常生活と勉強のバランスをとる。
Jさん
・家事育児との両立。
基本的に勉強時間は平日10~17時の間だけ、土日には勉強をしないと決め、子どもと一緒にいる時間は勉強をしない、と決めていました。3年次には夫の協力を得て夜遅くまで勉強させてもらうこともありました。
・取捨選択。
司法試験の勉強はやろうと思えば際限なくできるものであるので、プライオリティをつけて重要度の高い科目、勉強方法だけを実施するようにしました。
・他者による指導を取り入れる。
AAさん(※おひさま注:法科大学院で指導してくださる実務家の方々のことです。各法科大学院でその呼称は異なるかと思います)の添削課題の提出、司法試験の自主ゼミの活用等、他人に自分の答案を見ていただく機会を増やすようにしました。
Kさん
講義の予習・復習、司法試験対策の自主ゼミ、個人での問題演習
Lさん
とにかく、ローに入ったからには、可能な限りローの資源を使い倒そうというのはあった。授業もなるべくしっかりと聞いて、その復習にかなり力を入れて自分の中で消化するように心がけた。
あとは、疑問点については、そのままにせず、図書館やデータベースを用いていろいろと資料をあさったり、オフィスアワーという教授の個別ブースのようなものを利用したりして、納得いくまで解決させていく努力もした。
あとは、サマークラークにも力を入れていた。もともと企業法務に興味が特段あったわけではないが、いくつもサマークラークに行く中で、企業法務に興味を抱くようになり、最終的にそちらの方向で働きたいと考えるようになった。
そして、大手法律事務所ではサマークラークでの評価が重要と聞いていたので、本命でないところも多く応募し、参加することで幅広く予備知識を仕入れたり、慣れという意味での練習をしたりして、本命のサマークラークに備えていました。サマークラークに参加できるようにローの成績も気にしていた。
Mさん
講義の予習・復習、サマクラの準備、司法試験の勉強。サークルや自主ゼミはやっていませんでした。

Q4-3:予備試験を受験しなかったことによる利点があれば教えてください。

Hさん
力が散らず、法科大学院での勉強にまっすぐ取り組めました。
Iさん
予備試験の準備は,そのまま司法試験の勉強に重なるところがほとんどであるとは思うが,ロースクールの生活で,定期試験という学修の到達を図る締切と,別の締切に追われるのは,気力や体力を削られ,ストレスになると思うので,それがないこと。
Jさん
・家事育児との両立。
わが子にとって貴重な幼少期時代に、親である私が多忙を極めることがなく、良かったと思っています。
・心理的負担の軽減。
司法試験の一発合格と奨学金獲得以外の目標をいろいろと定めると、プレッシャーがかかり、ストレスになっていたと思います。
Kさん
法科大学院の勉強に力を入れることができた。
特に、2年次は予備試験の試験日と中間試験の日程が近かったが、法科大学院の勉強や試験対策に集中できたため、良い点数をとることができた。
Lさん
これは、どこに価値を置くかというところになるかと思うが、個人的には、ローに行くことで、学生生活を延長し、いろいろと遊びの面も充実したことが一番大きかったかもしれない。これはこれで、ローに行くことの大きな意義かなとも思う。
あとは、ローで腰を据えた学修をすることができたので、それによって思考力の訓練や各論点についての深い理解などもできたと思っている。試験的な側面に限らない学修もできたので、遠回りであっても、それに見合う力を得られたと考えている。
ローに在学している最中という意味では、ローの学修に集中できたので、不器用な自分でもローの成績に集中することができた。要領がいい人であれば、二兎を追うことも十分可能かもしれませんが、自分にはそれが無理だったと思うので、大きなメリットといえばメリットだったと思います。
Mさん
予備試験では聞かれるけど司法試験では聞かれないこと(一般教養等)を勉強するために時間を割かずに済んだことです。

Q4-4:逆に、予備試験を受験しなかったことで後悔したことはありますか。

Hさん
特にありません。
Iさん
なし
Jさん
ありません。
Kさん
下四法の短答の勉強をしなかったので、それらの細かな知識を身につけることができなかった。
Lさん
特にはないですが、強いていえば、修習の予備試験組を見て、若いなぁと思うくらい、、、、(笑)
Mさん
就活で予備試験合格者は有利なので、本気で勉強したら合格していたかな・・と少し後悔しています。

Q5:司法試験合格に向けて、中心にしていた学習はなんでしたか。

Hさん
演習をしつつ講義の復習をして、一元化ノートを作成することと、司法試験の過去問を起案して添削を受けることの2つを中心に行っていました。
Iさん
ロースクールの講義とその復習
Jさん
・学校の講義
在学中の学習内容は、講義の予復習と定期試験対策が7割です。予習に向いている科目、復習に向いている科目を見極め、科目ごとに比重を変えて予復習していました。定期試験前は講義ノートをまわしながら過去問を解いていました。
・自主ゼミ
自主ゼミでは、問題集を解いてお互いに添削し合う、司法試験対策の答練等をしていました。
その他、科目ごとに、その科目が得意な子に質問して教えてもらう時間を設けてもらったりもしていました。
・まとめノートづくり
3年間を通して、情報の一元化を意識し、卒業までには司法試験対策ノートを各科目1冊ずつ仕上がっていることをイメージしていました。
<卒業後>
・まとめノート8割、短答対策ゼミ2割
・まとめノートをひたすら回していました。気になるところは百選等で読み直し、暗記というよりは内容の理解に努めていました。
・短答対策ゼミを実施して判例六法の素読やお互いに問題を出し合う、過去問を解いてスコアを競う等のことをしていました。
Kさん
自主ゼミ、個人での問題演習
Lさん
ローの授業それ自体とその復習が中心。上に被るが、それに加えて自主ゼミでの検討で疑問点を発見し、それを教授陣に質問し解決させていくのも中心としてやっていた。
予備校は利用していたが、あくまでも補助的な利用で、短答対策や苦手科目の補強のためのものとして扱っていた。
Mさん
基本書と判例百選をしっかり読むこと、何回も過去問を解くこと

Q6:最後に、現役の法科大学院生に対してアドバイス・メッセージがあればお願いします。

Hさん
インプットとアウトプットのどちらも偏りなく行い続けることを意識して勉強するといいと思います。答案添削は積極的に受けるべきだと思います。
Iさん
自分に合うやり方はそれぞれだと思うので,学修計画は,結果と次の締切を見据えながら常に見直して,進めていくと良いと思います。
Jさん
法科大学院生の中には、家事・育児・介護・アルバイト等、様々な事情で思うように学習時間を確保できない方もいらっしゃるかもしれません。ふとしたときに、「今頃他の子は勉強しているのかな。」「短い時間で司法試験対策を十分にできるのかな。」と不安に思うことがあるかもしれません。ですが、勉強は時間や量より質だと思います。勉強できる時間帯にはきちんと集中して、他者と比べることなく、淡々と司法試験合格と自分の実力との差だけを比べてやっていけば大丈夫です。自分を信じ、周りの人に頼ることもしながら、ぜひ頑張ってください。
私は講義と自主ゼミを大切にしていましたが、予備校を上手に活用している人もたくさんいました。勉強方法には正解がないと思っていますので、他者のやり方を参考にしつつも、自分のやり方を見つけてやるのが一番いいと思います。私が書いたことが、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
Kさん
司法試験に合格するためには、広範な知識を身につけ、膨大な量の過去問や演習問題をひとつひとつ解いていく必要があるため、計画的な勉強が鍵になると思います。試験日から逆算して、いつまでに何をすれば良いのか、何ができるようになっていれば良いのかを考え、計画立てながら勉強を進めると良いと思います。頑張ってください!
Lさん
ロースクールについては、外野がいろいろとかまびすしいですが、ロースクールに入って学んでいるから負け組ということも決してないと思っています(これ自体負け犬の遠吠えという人もいるでしょうが)ので、外野は気にせず、がっつり学び、がっつり遊ぶといいと思います。どうせ試験に合格してから忙しくなり、まともに遊べなくなるのですから、生き急ぐ必要もないと思います。
あと、ロースクールに入っている以上は、その環境を十二分に使い果たしてやろうという意気込みで学修することが重要です。そうすれば、司法試験についても結果は必ずついてきます。
是非、いまの環境をフル活用して、合格の二文字を獲得されることを願ってます。
頑張ってください。
Mさん

  1. 予備校のテキストだけに頼るのは絶対やめたほうがいいです、基本書と判例百選をしっかり読んでください!
  2. 出題趣旨と採点実感は丁寧に読んでください
  3. 模試はこまめに受けたほうがモチベーションと集中力を維持できます
  4. 知識の一元化は大事です。試験会場に持っていくテキストを各教科1冊決めて、それに知識を書き込んでいくといいです。
  5. 過去問は答えを覚えてしまうくらい解くと当日安心できます
  6. 寝る前1時間くらい覚える時間を作るのがおすすめです。次の日けっこう覚えています
  7. 教授は質問攻めにしましょう。つまらない質問をしても教授は怒りません
  8. どうしても集中力が切れて勉強できない時は運動してみてください。リフレッシュ出来ます
  9. 多少歯肉炎になっても構わないので、当日は試験前にブドウ糖を沢山食べましょう。頭の働きが全然違います

3.アンケート結果を踏まえて

在学中に予備試験を受験しなかった皆様に共通しておられるのは、法科大学院での学習を軸として司法試験合格を目指すといった点にあると思います。法科大学院では演習科目の設置や実務家によるゼミや講義が設けられていることが多いですから徹底したサポート下で学習をすることができます。ここは法科大学院の良い点だと思います。
また、法科大学院には社会人経験を経たうえで入学される方も多くいらっしゃいますが、家庭を持たれている方ですと家事など勉強に必ずしも専念できるわけではないので、両立を図る観点から予備試験を受験せず法科大学院での学習に専念するという方もいらっしゃいました。実際に私が法科大学院に在学していた当時も社会人出身者の方々はこういった理由から予備試験の受験を避けて法科大学院での勉強に専念されている方が多かったです。
経済的観点から見ますと、前回法科大学院で学習するにあたってかかるコストについても言及しましたが(国立で200~300万円程度、私立で300~400万円程度)、多くの法科大学院は奨学金の制度を設けています。その中には、学業成績の出来によって給付されるものも多くありますので、奨学金の給付を受けられる(あるいは継続する)ことをモチベーションにして勉強を進めることもあるかと思います。半額免除を得られるだけでも経済的負担は全然違うので、これから法科大学院での学習をする方は奨学金の獲得を目指して勉強に励むことも良いかと思います(参考までに、私は1年目に全額免除で2年目は半額免除を受けました。最終的な負担額が本来の4分の1に収まったことは大きかったです)。
前回は、法科大学院在学中に予備試験を受験することのメリットについてご紹介しましたが、今回のアンケート内容を見れば、必ずしも予備試験を受験しなくても、法科大学院の講義を中心とすれば十分に司法試験の合格を目指すことはできますし、経済的負担を和らげる手段はほかにも存在することがわかるかと思います。

4.おわりに

前回の記事と今回の記事を通して、法科大学院在籍経験者の方々の予備試験の位置づけなどが多種多様であることが伝わったかと思います。法科大学院在学中の予備試験受験に関して重要なのは、自分の最終目標を達成する上でどのような過程を経ることが必要なのかを策定し、適宜修正を加えることかなと思っています。その中で予備試験合格が自分にとって果たさなければならない目標となるのであれば、積極的に受験すべきであると思いますし、予備試験を受験することが自分の目標達成に当たって重荷となるのであれば受験しないことも検討する必要があるかと思います。
今回までの記事が、受験者の皆様の学習計画における参考に少しでもなれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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