司法試験4回目で短答落ちを覚悟。一般企業就活『プチ』体験記 written by ぽんぽん
1.半狂乱の2日間
令和2年司法試験が終了した当日、会場から出た私は開放感を全身で感じながら、おしゃれな大阪・梅田の街を『予備校に行く』という目的以外の理由で久しぶりに歩く予定でした。
ところが、当日の短答式試験は、民法・憲法・刑法の3科目のうち民法・刑法の2科目でかなり難化(※ぽんぽんの実感です)。会場から出てきた私は満身創痍feat.絶望感という状態で、スマホに心配した母からの着信があるまで商業施設のエスカレーターを延々と昇ったり降りたりしている状況でした。
夕飯は家族とごちそうを食べたらしいのですが、いまだにどんなものを、どこで食べたのか全く思い出せていません。母曰く、顔が真っ青な上に引きつっていたそうで『これは何かあったに違いない』と思ってはいたのだとか。
翌日になり、各予備校の短答式試験出口調査が始まりました。早速、有名どころの2校の出口調査に登録したところ、結果は175点満点のうち98点又は100点。昨年度の令和元年司法試験のボーダーが108点だったので、およそ10点足りないことになります。
終わった瞬間に嫌な予感はしたものの、現実を突きつけられた私は文字通り泣き叫びました。社会人受験生として仕事と勉強を必死で両立させてきた一年が無駄になってしまった、また一年こんなに大変な思いで勉強するなんて絶対に嫌…
そんなことを思いながら、同時に『もういいかな』『十分やっただろう』という気持ちもふと浮かんできたのです。
2014年に東京大学法科大学院に入学以降、約7年にわたり勉強を続けてきましたが、気持ちの糸がぷっつり切れる感覚はこの時が初めてでした。
『どうも自分自身の限界が来たようだ』と感じた私は、家族そして当時は婚約中だった夫と話し合い、司法試験からの撤退を決意したのでした。
2.司法試験を撤退したら、進路はどうなる?
当時、私は母が実家で経営する学習塾の経営者側として働きながら受験勉強をしていました。しかし、婚約者が東京の会社勤務のため、結婚するとなると東京で生活することになります。そこで、司法試験撤退後は東京の企業の法務部で働くのはどうか、と家族に提案されました。
正直なところ、司法試験で挫折したてほやほやの私には『法律を扱う現場』に対し恐怖心がありました。司法試験不合格の経験がことあるごとにフラッシュバックしないか、法務部という仕事柄弁護士さんと関わることもあるだろうけど、その時に自己否定的にならないか…色々と悩みましたが、今の私は就職先を選ぶのではなく選んでもらう立場。ここで悩んでいても仕方ないと考え、日本を代表する超有名就職エージェントと企業法務専門の就職エージェントの双方に登録し、自分の市場価値をまずは知ることから始めることにしました。
3.法科大学院修了+浪人時代はキャリアとはみなされない!?自分の市場価値の現実
司法試験終了から3日後には、就職エージェントサイトへの登録を始めました。私は法科大学院卒業から3年以上経過していたため『転職』の方に登録。プロフィールの登録等は項目が非常に細かくかなりの時間がかかりましたが、『新しい人生をようやく始められる…!』と遅ればせながら司法試験からの開放感で高揚した気分でいっぱいでした。
プロフィール登録後から約1週間程度で行われたエージェントの方との面談で、私は早くも現実を突きつけられることになります。
『ご家族の学習塾以外で働いた経験は?』『英語と中国語以外にできることは?』と矢継ぎ早に自分のプロフィール外のことを質問され、ひたすら『ありません』『やっていません』と返答するのみ。自分のやりたいこと、興味のあることは聞いてもらえず、何とも面倒くさそうなご様子…せめて志望分野だけは言っておこうと『法務部以外も視野に入れて就活をしたい』という私に『それなら、学習塾で働かれていたので、教材制作会社はどうですか?』と一言。
『ああ、これが現実なんだな』と思わずにはいられませんでした。
自分たちのいた狭い世界の中では、東京大学法科大学院出身であることも、社会人をしながら司法試験を受験していたことも、語学がそれなりにできることも、(上には上がいるとしても)少しは評価してもらえたけれど、母体数が一気に増える『転職を希望する社会人』の集団の中では、自分には全く市場価値がないのだと思い知らされたのです。
悲しい、悔しい、けれどこれが現実だ。このことを教えてくださったエージェントさんに御礼のメールを送るとともに、別のもう一つの方で企業法務部に絞った就活をすることを決意したのでした。
4.一方、企業法務部特化型エージェントでは…
企業法務部特化型のエージェントに登録して3日後、すぐに面談をしていただきました。
こちらの方は毎年法科大学院卒の方や司法試験を撤退された方の就活支援をされているらしく、法科大学院・司法試験にも詳しい上、勉強がどれだけ大変かもわかっていてくださったので、とにかく安心して色々なことを包み隠さず相談することが出来ました。
大学終了後から法科大学院を経て司法試験から撤退を決意するまで、私の場合は約7年と長い月日がかかりましたが、これらの期間も『法律というフィールドで勉強を積み上げてきた期間』というように、ひとつのキャリアの形成期間と捉えて頂けたことが本当に嬉しかったことを覚えています。
お話しを進める中でわかった重要なことは、一般企業法務部への就活をする場合、司法試験からの撤退を決断しただけでは足りず、『仮に受かっていても、修習には行かずに内定先の企業へ就職する』ことが必要だということです。つまり、『何があっても内定先の企業に就職する』状況でないと就活をスタートできないのです。
こちらのエージェントにご相談した際には短答式試験の自己採点点数しか出ておらず、しかも日に日に出口調査の全体平均点が下がっており、『もしかしたら、ボーダーがかなり下がるかもしれない』とほんの少しの期待が出てきているところでした。
『司法試験からの撤退を決めたこと自体に後悔はしていないけれど、仮に短答落ちを免れて、論文を採点してもらえるようになり、万が一でも司法試験に最終合格出来たとしたら、私は修習を諦めて企業に就職できるだろうか?』
正直、私はまだ合格の夢を見ていたいと思ってしまいました。確かに短答の点数はボロボロだったのですが、論文では手ごたえを感じていたこともありましたし、企業法務部への就活を始めたきっかけも『4回目で短答落ちだし、弁護士にはなれそうにない』というものであり、『法律事務所勤務の弁護士は向いていなさそうだから、企業の社員として働きたい』わけではなかったからです。
企業法務部への就活を希望したものの、『この道で生きていく覚悟はまだできていない』と自分の甘さにも直面したのでした。
この自分の気持ちを素直にお伝えしたところ、とても快く『とりあえず各結果の合否を待つ』ことを提案してくださいました。
そして、随時私の希望に合いそうな求人情報を送ってくださる等、メール連絡も取りながら約5か月が経過し、ついに『司法試験最終合格』の連絡をすることができました。
この際の返信もとても心のこもった温かいものであり、結果的に私はこちらのエージェントにお世話になることはなかったものの、とても良い経験をさせて頂きました。いつか弁護士として、直接御礼をお伝えできればと思っています。
5.最後に
以上が私の企業法務部の就活『プチ』体験記になります。本当に短期間の活動ではありますが、以上を通して知ったいくつかの重要ポイントを最後にまとめておこうと思います。
・司法試験に最終合格しても修習には行かずに就職する場合でないと、この時期(司法試験終了直後)からの就活はできないことが多い
・英語能力(TOEIC730点以上)が必要とされることが多いので、英語の勉強はマスト
・自分のプロフィールが評価されていないと感じたら、複数のエージェントに相談を
司法試験の後、自己採点レベルであっても一定の評価が出始めると、頭の中を様々な選択肢が巡ると思います。
どんな道を選ぶことがベストなのか?悩む日々かと思いますが、これからもこちらでの情報発信を通じて、皆さん自身が『この選択で本当に良かった』と思える日を迎えられることを心より願い、そして応援していきますのでどうぞよろしくお願いします。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。また『弁護士求人ナビ』でお会いしましょう!
無料の就活相談はこちらから。お気軽にご相談ください!!
↓