司法試験合格までの道のり Written by おひさま
目次
0.はじめに
はじめまして。おひさまです。今回から弁護士求人ナビにて記事を掲載させていただくこととなりました。私は早稲田大学法学部を卒業の後、早稲田大学大学院法務研究科に進学しました。そして同法科大学院を令和2年に修了し、令和2年司法試験に合格することができました。現在は、第74期司法修習生として、実務修習に取り組んでいます。自分の経験を、これから先司法試験合格を目指される方々にお伝えできれば良いと思いnoteで記事を書き始めました。「弁護士求人ナビ」さんが、私が投稿している記事に目をとめて下さり、今回よりライターとして記事投稿をする運びとなりました。
投稿スタイルについては、noteと同様に、自分の経験してきたことを皆様にお伝えし、皆様が今後司法試験を受験するにあたっての資料の1つになればと思っております。はじめに申し上げますが、司法試験の学習に正解はないと思います。
ですので、読者の皆様には、「こういう考え方もあるんだなぁ」という気楽な気持ちで読んでいただければと思っております。よろしくお願いします。
今回の記事は、初めての投稿になりますので、私の自己紹介がてら私の司法試験合格までの経緯を記事にさせていただければなと思います。
1.法曹を志したきっかけ
私は大学入学時より法曹を志していたわけではありません。最初は、自分には到底無理な世界だなという感情が自分の中にありました。しかし、法学部で講義を受け、法律を学んでいくことで将来は大学で学んでいることを活かせる仕事に就きたいという思いが徐々に強くなってきました。司法試験受験と悩みましたが、司法試験は自分には難しいかなという思いもこの時はまだあり、大学3年時より国家公務員総合職を受験しようと考えて、それに向けた学習を行っていました。ですが、業界研究を行っていく中で、自分のやりたいことと入省してできることがずれているような気がしはじめ、「本当にこの進路でよいのだろうか」と悩むことも多くなりました。
そのような心境の中で、大学で開催された厚生労働省の説明会において、採用担当者で、自分と同じように司法試験を合格して法曹になるか、国家公務員になるかを悩まれた方がいたので自分の悩みを打ち明けました。その際、当事者に寄り添って仕事を行える仕事をしたいのなら司法試験を受験して弁護士になったほうがいいかもしれないとアドバイスを受けました。私としては、人のためになる仕事をしたいという思いが強かったので、そのアドバイスが身に沁みました。
そういったアドバイスを受け、難関な道になることは承知の上で、大学4年次に司法試験合格を目指すことを決意しました。
2. 司法試験合格までの経緯
「0.はじめに」で記載したように、私は早稲田大学大学院法務研究科を修了して司法試験を受験しました。法科大学院ルートでの受験資格になります。
ご存じの方も多いかと思いますが、司法試験の受験資格を得るためには法科大学院を修了する(未修:3年・既修:2年)か、予備試験に最終合格をすることが条件となります。
私は、本格的に司法試験合格を目指し始めたのが大学4年の4月からでした。それまでも、国家公務員総合職試験の合格を目指していたので、法律の勉強もそれなりにはしていました(あとは、単純に法律の学習が好きだったので、法律系の科目の試験勉強はちゃんとしていました)。しかし、司法試験の必修である商法や訴訟法系の科目は1年以上手を付けていませんでしたし、行政法も事例演習を十分に行えていない状態でした。
志望を切り替えた段階で、予備試験合格を目指すのも手段としてはあったかもわかりません(実際に志望を切り替えるのは3年後期の年明けから迷っており、一応出願はしていました)。ですが、私としては、最短で司法試験に合格できる可能性が高いのはどういった手段なのか自分なりに考え、合格の確証が持てなかった予備試験に挑戦するのではなく、法科大学院入試に既修者で合格し、2年間着実に力をつけて司法試験に一発で合格することを目指すことに決めました。
法科大学院は、8~9月に中央、早稲田、慶應を受験し、結果は、いずれの法科大学院にも合格することができました。いずれの法科大学院も魅力的でしたが、早稲田を選んだのは、以下の理由があります。
①経済的理由
私立の法科大学院の学費は、2年間(既修の場合)でだいたい110万円から130万円かかります。なかなか払うことは難しいです(周りにも入学後アルバイトして学費を払っている人はいました)。そのなかで、早稲田に合格した際に、学費の全額免除も受けることができました。加えて、内部生は入学金を支払わなくてもよかったので、1年目に経済面の心配をすることなく学習することができるというのはすごくありがたいと思い、早稲田への進学を決めた大きな要因の1つとなりました。
②環境面
早稲田を選択したのは、大学の時に教わっていた教授の多くが法科大学院でも講義を持っていることでした。別の法科大学院を選んだ場合、新たに環境になれる必要がありますし、先生の評判も正直よく分からないところがあるなと思っていました。反面、早稲田で教えられている先生方は知っている方も多くいらっしゃったので、わからないところがあったときは気兼ねなく質問に行くことができると思いました。
早稲田に入学後は、2年間講義を中心に学習方針をたてて、日々学習を重ねてきました。また、自分よりレベルの高い学生と自主ゼミを行う機会も多く得られました。
早稲田の法科大学院で充実した2年間を過ごすことができ、修了後1回で司法試験に最終合格することができました。自主ゼミの進め方など、この辺りの話は後日またできればいいなと思っています。
3.法科大学院入試・司法試験を合格する上で意識したこと
2の経緯をたどって無事に司法試験に合格できたわけですが、既述したように商法や訴訟法、行政法(いわゆる下四法)の学習は不十分でしたし、上三法も法科大学院合格を目指すうえではまだまだ演習量や知識量が不十分な状態でした。また、勉強を始めたのが4年の4月であったので、8月末の法科大学院入試までの4か月で合格レベルに達しなければなりませんでした。そこで、学習に当たっては、以下のことを重視しました。
①インプット(教科書やテキストで知識を覚える)に割く時間よりもアウトプット(問題演習)を重視
法科大学院入試は事例形式の出題がほとんどになります(私のときは慶應の刑訴で一行問題っぽい出題もありましたが)。私としては、どれだけ知識や論点を記憶したところで事例問題が解けなければ意味がないなと考えていました。
そこで、事例演習を重点的に行うことにしました。
具体的には、初学の段階から、基本書で論点や知識を学習し、そのあとすぐに事例形式の問題集を用いて自分がインプットした箇所をテーマにした問題を実際に検討する方式をとっていました(インプット→アウトプットの繰り返しですね)。こうすることで、自分がインプットした知識を、問題を解く際にどのように使うのか意識づけをすることができましたし、学説の対立など教科書等を読むだけでイメージしにくい論点などについて、実際の事案でどのように差がつくのかを学習していました。
このほか、私立の法科大学院の入学試験2か月前より(この時期に基礎学習と上記の事例演習はある程度終わっていました)個別指導で司法試験合格者に論文問題を起案したものを添削してもらい、指導を受けました。このときは、主に法学教室の演習(冊子の後半あたりについているもの)を中心に活用しており、また挑戦的な意味も込めて、東大の過去問や予備試験・司法試験の論文式の過去問も解いていました(後々ですが、この段階で司法試験の問題の出題レベル・難易度を把握したことで、合格までにどのような学習をすればよいのかプランを立てることができました)。
このように、私はインプットよりもアウトプットを重視した学習方法を採っていました。この方法で私は法科大学院入試で上記の成果を上げることができ、やっていることは間違っていないかなという安心を得ることができ、入学後司法試験合格を目指すうえでの学習もこの方法を軸に行っていきました。
②過去問分析に時間を割く
法科大学院入試を戦うにあたって、各法科大学院で過去どのような問題が出題されたのか、実際に過去問を解くとともに、時間的な制約で解けなかったものについてもどういった論点が問われているのかを把握するために論点のチェックだけは行っていました。量で言うと、10年分くらいは検討した気がします。特に早稲田は刑法で一行問題が出題されるのですが(公務執行妨害罪における職務の適法性について論ぜよ、っていう感じの問題です)、毎年異なる問題が出題されていたため、出題範囲を予測する上で範囲を絞るのに便利でした。
過去問分析をすることで、合格にどういった知識が必要なのかを自分で整理できますし、次に来る出題を予測してみてそこを重点的に勉強するなどしていました(もちろんそれ以外の部分もやってます笑)。
実際に、早稲田と慶應の入試では、過去問分析の結果が活きました(早稲田は憲法と訴訟法、慶應は民法の出題予想が当たりました)。
過去問分析をすることで、対策はかなり明確になります。司法試験でも過去問分析は重要視していました。特に直近の10年はどういう出題がされたのか、出題趣旨と採点実感を熟読するとともに、趣旨に沿った答案を作成するにはどういう事実を拾うべきか、事実をどう評価するか、どういった勉強をしなければならないのかは考えていました。
4.おわりに
以上、自己紹介も兼ねてどういったプロセスで私が司法試験合格を目指したのか紹介させていただきました。
今後は、今回の記事で書いたことを掘り下げた記事を公開したり、事務所就活や司法修習(守秘義務に反しない範囲で)での経験談をお伝えさせていただければと思います。
お読みいただきありがとうございました。