『司法試験受験&弁護士就活の「今」~元司法試験受験生が考えること』 Written by ぽんぽん
◆目次
0.はじめましてのご挨拶
1.司法試験受験は情報戦のその先へ
(1)現在の司法試験で格差が生じている地点はどこか?
(2)受け取った情報に対する懐疑心を無視しない
2.法律事務所就活についての謎は深まるばかり…
(1)修習生が抱える法律事務所就活のリアルな悩みとは?
(2)弁護士就活の『難しいところ』
3.おわりに
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目次
0.はじめましてのご挨拶
こんにちは!はじめまして、ぽんぽんです。私は2017年3月に東京大学法科大学院(未修)を卒業後、フルタイムワーカーとして実家の塾経営に携わりながら4回目挑戦となる令和2年司法試験に合格しました。現在は3月末からの司法修習生活に胸を躍らせつつ、法律はもちろんのこと、英語、中国語、中小企業診断士試験等について勉強しています。普段は主にTwitterやnoteにて司法試験経験談を受験生の方向けに発信しているのですが、『弁護士求人ナビ』さんよりお声掛け頂き、今回よりライターとして寄稿させて頂くことになりました!これからも記事を更新予定ですので、どうぞ宜しくお願い致します。
1.司法試験受験は情報戦のその先へ
合格に直結する勉強のやり方、基本書、演習書、予備校etc…
何を、いつ、どのように使うべきなのか?
『利害関係の絡まない、生の情報』はどこにあるのか?
先日、74期の方3名をお招きし『司法試験&法律事務所就活でほしかった情報』について1時間半程度お話をしました(皆様、ご協力ありがとうございました!)。
(1)現在の司法試験で格差が生じている地点はどこか?
出席者の合格までの経歴は様々ですが、共通していたご意見は『司法試験は【情報戦】の側面がある』ということです。近年、良質な基本書、参考書、演習書等が、予備校にとどまらず学者の先生方によっても書かれるようになり、かつては予備校や一部の法科大学院でしか得られなかった知識や勉強方法が数千円で簡単に入手できるようになりました。それに加えて、IT化が司法試験にまで波及した結果、オンライン司法試験予備校等がどんどん設立され、受験生たちがこれらを利用することは今や一般的となっています。しかし、これは司法試験受験生たちにとって良い影響ばかり、めでたしめでたしとすんなりいくような話ではないように思います。
かつての司法試験界における『合格格差が生じやすいポイント』は、膨大な知識をいかに効率的に吸収できるかという点にあったと言われています。分厚く難解な基本書を長い年月をかけてひとり読み解く受験生もいる中で、金銭的余裕のある受験生が予備校に通い、論証パターンを用いて効率的に知識を吸収し合格していくという構図は長い間批判の対象となってきました。他方で、現在の司法試験での『合格格差が生じやすいポイント』は知識の効率的な吸収という点にはなく、合格に必要な『情報を入手できる人』『得た情報を自分なりに吟味し、取捨選択できる人』『その取捨選択を手伝ってくれる人がいる人』というように、情報を自分に合わせて取捨選択をする段階で格差が生じているのではないか、と私は考えています。
成績優秀者や合格実績のある講師による個別指導が現在流行の兆しを見せていますが、この傾向はまさに『情報の取捨選択』自体を商品化することに他ならず、こういった予備校の個別指導等へ通う金銭的余裕のある人が合格していく構図は、かつての構図と根本的な点で非常に似通っています。もちろん本人の大変な努力・周囲の応援があることは合格の大前提ですし、個別指導に通っているということ自体が合格へのプレッシャーになることも否めないのですが、それでも『予備校等に少なくないお金を払って、優秀な講師陣から司法試験に関する知識等だけでなく、情報の取捨選択やメンタルケアまで受けることができる人』が合格していくという現実があることを私たちは認識する必要がありそうです。
(2)受け取った情報に対する懐疑心を無視しない
もっとも、予備校等からのアドバイスは100%受験生にとって必要なものだけで構成されているのかというと、やはりそうとは限らないと思います。予備校等も営業を継続し、新たな合格者を生み出すため収益が必要ですので、何かしらの魅力的な商品をラインナップし、受験生の購買意欲を高めることは当然のことだと言えます。しかしながら、人に個性があるように、受験生の受かり方にも個性があります。
「〇〇予備校に通い始めたけど、△△先生の講座のほうがわかりやすく感じる」
「信頼している予備試験合格の友人に□□という本をすすめられたけど、正直自分にはあまり理解できない」
といった悩みはよく聞かれるところですし、本来であれば自らの考えを尊重して他の方法を試してみるべきなのですが、
「この先生に師事してしまったし…」
「やり抜くこと、やり切ることが大切と言われたし…」
「今更テキストや勉強方法を変えるなんて、(怖くて)できない…」
と、自分の考えについての自信のなさから合格に向けて自らを軌道修正する機会が失われているのではないかと感じています(これは私自身の失敗でもあるのですが)。受け取った情報に対する疑念を受験生が無視せず向き合うことができるように、利害関係のないフラットな位置から勉強方法等についてセカンドオピニオンを受ける必要性も認識しておくべきかと思います。
2.法律事務所就活についての謎は深まるばかり…
21,2歳の大学生が知っている「就活の常識」さえ知らない私たちは、
一体どこで法律事務所就活のいろはを学べばよいのだろう?
(1)修習生が抱える法律事務所就活のリアルな悩みとは?
先日の座談会では就活に関する悩み、疑問についてもお話したのですが、
「一体いつ、どこの事務所が採用をしているのかわからないから、採用情報を見つけたらとりあえずエントリーしておこうとなりがち。自己分析の時間も余裕もない」
「どんな分野に興味がある?と聞かれて正直に言うと、それは儲からないよと言われる」
「服装、髪型、面接での受け答え等、とにかく何も知らない」
「社会人経験者OKなのかよくわからないまま応募し、『社会人経験者か…』という微妙な反応をされたことがある」
等、様々な修習生の悩みが聞かれました。これらの意見は内容こそ違いますが、『弁護士就活に関する情報の圧倒的不足』という共通の悩みがあるように思います。
(2)弁護士就活の『難しいところ』
一般的な新卒採用では就活解禁日が設けられていますが、法律事務所の弁護士就活のスタート日時は事務所ごとに異なるため自分自身で調べる必要があります。有名な事務所や人気の事務所は「気付いたら今年の就活は終わっていた」ということもあるほどです。このように、弁護士就活では説明会に参加するというはじめの第一歩から自主的な行動が求められるため、初手の初手から就活生間で差がついてしまいやすいと言えます。
じゃあ司法試験が終了したら直ちに就活を開始すれば良いのかというと、就活を焦るあまり、自己分析が十分でないまま就活の海に漕ぎ出てしまい、就職後にミスマッチに気付く事態が発生する可能性も多々あります。
法律事務所の多くは自らの得意な看板分野があるものですが、その業務分野が何で、どういったものかについては修習生自身で検索できても、『それが自分にとって合うのか』という点を十分に検討することは、業務経験のない就活生だけではほぼ不可能です。
また、法律事務所には、ベテランの先生方が多数おられる安心感のある老舗事務所、若手の先生方が牽引される自由闊達な雰囲気の事務所、小規模だけれどアットホームでのびのびした雰囲気の事務所など、事務所の数だけカラーがあります。このカラーを自分は好きか、合っているかを精査しないまま就職し、結果として『自分のやりたい業務・思い描いていた雰囲気ではなかった…』と事務所・弁護士相互のミスマッチが生じてしまうことは、法律事務所・弁護士の双方にとって不幸な事態と言えるでしょう。
こういった不幸なミスマッチを少しでも防ぐために、ほんの少し抱いた違和感や疑問を見て見ぬふりせず、弁護士就活経験者の意見を聞きながら各法律事務所への理解及び自己分析のノウハウを取得する必要がありそうです。
3.おわりに
司法試験、そして司法試験終了後の弁護士就活の双方において、『情報の有無』がその成功に大きく影響することは間違いありません。
「情報がなくても合格する人は合格する」
「個別指導なんて受けなくても合格している人はたくさんいる」
「就活だって、特別なことをしなくてもできる人はできる」
という言葉は間違ってはいないのでしょうが、うまく情報を得ることで、成功までの道のりをショートカットできるのであればそれに越したことはありません。
今後も様々なテーマで記事を書かせて頂く予定ですので、どうぞ宜しくお願い致します。
そして、僭越ではありますが、記事やTwitterを見てくださった方がたった一人でも成功への道をショートカットできることを願って、日々更新を頑張ろうと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました!またお会いできますと嬉しいです。
◆筆者プロフィール
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