選択科目の選び方 written by 76期司法修習生 佐藤 和樹
目次
1 はじめに
司法試験の受験科目は、基本7科目と選択科目1科目の合計8科目になります。そのうえで、選択科目はその文字通り、受験生が選択科目として指定されている科目を選ぶことになります。
そのため、どの選択科目を選ぶのがよいのか、大変悩まれている方も多いと思います。そこで、今回は、選択科目を選ぶ際の着眼点をご紹介します。
2 選択科目
1 選択科目の種類
選択科目は、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)の合計8種類があります。
その中から、受験生が1つの科目を選択し、司法試験当日、選択した科目を回答します。
2 各科目の特徴
(1)倒産法
倒産法では、主に破産法と民事再生法を学習します。倒産法は、実務においても必ずと言ってもよいくらい用いる法分野になりますので、司法試験科目として選択し、勉強をしておくことで、実務に出てから有利になるでしょう。
司法試験との関係でも、一定の受験者数がいるのと同時に、基本書も充実しているため、おすすめできる選択科目の1つです。
(2)租税法
租税法では、主に所得税法について学習します。租税法は、実務ではあまり活用する法分野ではありませんが、積極的に税に関する専門性を磨きたい方にとってはおすすめの科目です。
全体的に租税法を選択している受験生が少ないことから、ゼミや学習の悩みを共有できる場面がどうしても少なくなってしまうという点が難点といえます。
(3)経済法
経済法では、主に独占禁止法について学習します。経済法は、他の科目と比較すると、覚えるべき知識が少なく、1つの知識で多くの問題をカバーすることができることから、負担も少なく、労働法に次いで人気の選択科目です。
基本書等も比較的充実していることから、おすすめの選択科目です。
(4)知的財産法
知的財産法では、主に特許法と著作権法について学習します。
知的財産法の特徴は、毎年何らかの法改正があることから、常に新しい法を意識する必要があること、実務でも何らかのかたちで知的財産に絡むことがあることです。
受験者数も一定程度いること、基本書も大変充実していることから、知的財産について興味・関心のある方にとっては、おすすめの選択科目です。
(5)労働法
最も多くの受験者が選択している科目です。労働法は、他の科目と比較して、身近に感じやすい事例問題を扱っており、イメージが付きやすいこと、学習の取っ掛かりとして最適であることが特徴です。
また、実務においても、労働法に関連する問題に直面することが多々ありますので、受験生の頃から勉強をしておくことは今後も見据えて大変有効です。
数多くの基本書と演習本が市販されており、おすすめの選択科目です。
(6)環境法
環境法では、環境10法(環境基本法、環境影響評価法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、土壌汚染防止法、循環型社会形成推進基本法、廃棄物処理法、容器包装リサイクル法、自然公園法、地球温暖化対策推進法)といわれる法分野を勉強します。
行政法との親和性が非常に高く、行政法が得意な受験生は環境法を選択するのがよいでしょう。
(7)国際関係法(公法系)
国際関係法(公法系)では、国際法、国際経済法、国際人権法の3法を学習します。国際関係法(私法系)とは異なり、国際間に適用される法関係について学ぶことになるため、かなり専門性が高い分野です。
基本書の数も非常に少なく、受験生もごくわずかです。ですので、将来国際的な仕事をしたい方にとっておすすめです。
(8)国際関係法(私法系)
国際関係法(私法系)では、法の適用に関する通則法・訴訟法などについて学習をします。
外国人の私人間紛争の法適用(いかなる国の法が適用されるか否か)について学習することなるため、国際関係法(私法系)と同様に非常に専門性の高い科目です。
3 選択科目を選ぶ際の着眼点
ご自身の興味・関心のある分野から選ぶとよいでしょう。もちろん、基本書の充実度や受験者数の多さなどにも着目すべきです。ですが、何よりご自身が興味・関心がなければ、勉強も捗らないと感じます。
そのうえで、将来、実務に出た際、どのような事件・分野について専門性を磨きたいかを考えるのも有意義です。
4 選択科目別比率
直近5年分の選択科目別の比率を以下、表にしてまとめました。
見てわかるように、労働法・経済法・倒産法・知的財産法の4科目の受験者数が多く、残りの租税法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)の4科目は比較的少数になっていることがわかります。
令和5年 | 令和4年 | 令和3年 | 令和2年 | 令和元年 | |
倒産法 | 14.6 | 13.7 | 12.9 | 12.3 | 13.7 |
租税法 | 6.0 | 6.8 | 8.2 | 7.9 | 7.4 |
経済法 | 20.2 | 19.1 | 18.8 | 18.6 | 17.8 |
知的財産法 | 15.7 | 15.2 | 14.3 | 14.3 | 13.5 |
労働法 | 28.9 | 29.8 | 29.7 | 30.1 | 29.3 |
環境法 | 3.5 | 4.2 | 4.2 | 4.4 | 5.8 |
国際関係法(公法系) | 1.4 | 1.2 | 1.4 | 1.3 | 1.3 |
国際関係法(私法系) | 9.7 | 10.0 | 10.5 | 11.0 | 11.1 |
*法務省‐司法試験受験状況参照
*単位(%)
3 最後に
1度選択した選択科目を途中で変更するものよいですが、なるべく最初に選んだ科目を最後まで継続して勉強を続けた方がより効率的です。
この記事を参考に、選択科目を選ぶ指針になって頂ければと思います。