行政法の基本書 written by 76期司法修習生 佐藤 和樹
目次
1 はじめに
行政法の勉強をするにもどれから手をつけたらいいのか、どの基本書や演習本がよいのか、迷われている方は大変多いと思います。
そこで、今回は、行政法の基本書・演習本についてご紹介いたします。
2 基本書・演習本
1 基本行政法(中原茂樹著、日本評論社)、基本行政法判例演習(中原茂樹著、日本評論社)
日本評論社の基本シリーズの行政法版です。
本書の特徴は、簡易な事案が各所にちりばめられており、事案にあてはめた場合にどのようになるのかについて具体的に記載されているところです。そのため、理解が深まるだけでなく、記憶にも残りやすい構成になっています。
さらに、概念の説明をする際に、図が用いられていることが多く、視覚的にも大変わかりやすい内容となっています。
そのため、一見すると分量が多い印象を持つかもしれませんが、読み進めるとあっという間に読み込むことができますので、通読向きでもあります。
通読向き ★★★★★
わかりやすさ ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7687.html
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8962.html
2 事例研究行政法(曽我俊文他2名、日本評論社)
行政法の演習本として、従前から大変有名な本です。
具体的な事案と個別法が記載され、当該事案に対する解説が記載されています。出題形式も司法試験に類似しており、出題範囲も比較的広範囲にわたります。
また、コラムに記載されている内容も、実は本文記載の内容よりも重要なことが記載されているコラムもあり、細部にわたり、じっくり読み込むことが大切です(そのため、初学者向きではなく、あくまでも中級者から上級者向けの演習本となっています)。
他方で、やや難解な記載も一部あり、一読するだけではわかりづらいところもあるかもしれません。とはいえ、いずれにせよ、行政本の演習本としては大変完成度の高い本になっています。
通読向き ★★★★★
わかりやすさ ★★★★☆
おすすめ度 ★★★★☆
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8602.html
3 基礎演習行政法(土田伸也、日本評論社)
非常におすすめの演習本です。内容は、司法試験予備試験の過去問を題材に、とてもわかりやすく解説がなされています。イメージとしては、上述した事例研究行政法が中級者から上級者向けの演習本であったのに対して、基礎演習行政本は初学者でも十分にわかりやすく記載されている内容になっています。
特に、処分性や原告適格について、判例の定義は誰しもが知っているところですが、いざ処分性や原告適格の問題が出題された際、定義は書いたものの、具体的にあてはめができない(又は不十分)方多いところ、本書では、判例の定義の具体的な意味(趣旨)にまで丁寧に説明をしています。
行政法に漠然とした苦手意識を持っている方は、是非とも手に取り、一読をして頂きたいと思います。
通読向き ★★★★★
わかりやすさ ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7092.html
4 行政法(櫻井敬子他1名著、弘文堂)
いわゆる「サクハシ」本です。行政法につき、体系的に記載されており、また色づけがわかり易く記載されていることからも、読みやすい本となっています。
もっとも、他の基本書と比較すると、格別大きな特徴があるとはいえず、基本書として主軸に添えるまでいかない印象を持ちます。
通読向き ★★★☆☆
わかりやすさ ★★★☆☆
おすすめ度 ★★★☆☆
https://www.koubundou.co.jp/book/b471585.html
5 行政法判例50!(大橋真由美他2名著、有斐閣)
行政法の判例を学ぶ上で、判例百選もありますが、本書もおすすめです。
本書は、判例百選と比較すると記載されている判例数は限られていますが、掲載されている判例はいずれも厳選されており、広く浅く判例を勉強するよりかは、狭く深く判例を理解することが重要です。
そのような観点からすると、行政法に余力がある方は判例百選を選択すべきではありますが、あまり余力がない方は本書を判例の勉強をする本にすることをおすすめします。
通読向き ★★★★☆
わかりやすさ ★★★☆☆
おすすめ度 ★★★☆☆
https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641227361
6 スタンダード行政法(村上祐章、有斐閣)
行政法の基本書として悩まれている方は、本書を強くおすすめします。本書は、法学教室の連載を書籍化したものです。内容は、非常にわかりやすく、趣旨から丁寧に解説がなされ、司法試験の出題傾向とも合致している印象を受けます。
また、司法試験に出題傾向が高い論点(処分性や原告適格、行政手続法の論点など)について、重点的に記載がされています。
ぜひ、一読して頂きたい一冊です。
通読向き ★★★★★
わかりやすさ ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★
https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641228269
7 行政法(宇賀克也、有斐閣)
宇賀先生の行政法概説の内容をコンパクトにまとめた一冊となっております。宇賀先生がご記載してらっしゃるため、内容面の信頼度は絶大です。
もっとも、内容面としては難解な部分もあり、分量もそこそこありますので、通読するよりかは辞書的に利用することをおすすめします。
通読向き ★★★☆☆
わかりやすさ ★★★☆☆
おすすめ度 ★★★☆☆
https://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641151093
3 最後に
以上のように、行政法の基本書のご紹介をしましたが、ご紹介したのはほんの一部にすぎません。まずは一度手に取り、ご自身で内容を確認することをおすすめします。